Drupalに訪れる“これまでで最大の波” ─コミュニティ最高責任者Tim氏が語る、DrupalとAIの現在地
コミュニティ最高責任者Tim氏が語る、DrupalとAIの現在地
2026年、世界中で愛されるDrupalは誕生から25周年という輝かしい節目を迎えました。この記念すべきアニバーサリーイヤーに合わせ、昨秋のDrupalCon Naraで語られたリーダーたちの貴重なメッセージを特別連載としてお届けします。
DrupalCon Nara 2025で実現したインタビュー
(右)インタビューを受けるTim氏(DrupalCon Nara 2025会場)
2025年に奈良で開催された「DrupalCon Nara2025」。世界中のDrupal関係者が集うこの場で、Drupal Association の最高責任者(CEO)であるTim氏に話を聞く機会を得ました。(Tim Doyle 氏の紹介:https://www.drupal.org/u/tim-d)
Drupalという25年以上続くオープンソースプロジェクトを次の時代へ導く立場にあるTim氏は、Drupal Associationの中核メンバーとして、グローバルなDrupalコミュニティの成長と持続を担う存在です。
本記事では、Tim氏が語るDrupalを取り巻く環境の変化やDrupal CMSの登場、そしてAIがもたらす「これまでで最大の波」について紹介します。
※本記事では、Drupal創設者であるDries Buytaert氏のコメント部分に斜体(イタリック)加工を施しています。
Tim氏が見てきたDrupalの変化ー就任から約3年間で起きた大きなうねり
Tim氏がDrupalに本格的に関わるようになってから、約3年。
その短い期間の中でも、Drupalを取り巻く環境は大きく変化したそうです。特に大きな転換点となったのが、COVID-19を挟んだ前後の状況。
コロナ禍では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の需要が急激に高まり、多くの組織でデジタル施策が進みました。
「コロナの間は、デジタルトランスフォーメーションを中心とした取り組みが非常に活発で、ビジネスも好調でした」
しかし、ポストコロナでは経済環境が変化し、Drupalの将来について疑問を抱く声も出てきたそうです。
「ポストコロナでは経済がやや低迷し、人々は『Drupalはこれからどこへ向かうのか』と考えるようになりました」
Drupal CMSの登場とその反響ー市場とGoogleからの注目
そうした状況の中で登場したのが、「Drupal CMS」。Googleを含めて大きな注目を集めたDrupal CMSは、わずか約18か月という短期間で構築からローンチまでが進められました。
「この18か月間で、構築からローンチまで本当に素晴らしい取り組みを行いました」
さらに、Drupal CMSはすでに次のフェーズへと進もうとしています。
「現在は、CMSの第2バージョンをまもなくリリースしようとしています」
このスピード感は、長い歴史を持つDrupalにとっても、象徴的な変化だと言えるでしょう。
AIがもたらす新たな転換点ー「逃げるのではなく、嵐に向かって進む」
Drupal CMSの動きと並行して、もう一つの大きな要素が加わりました。
それが、生成AI。
「生成AIという新たな要素も加わりました。AIは単なる施策の一つではなく、テクノロジーの捉え方そのものや、人々が日々の仕事にどう向き合うかを大きく変えつつあります」
AIに対して、不安を感じる人が多いのも事実です。しかしTim氏は、DrupalはAIを「歓迎している」と明言。
その理由を説明する際、Tim氏はDries BuytaerTim氏がDrupalConで語った、ある印象的なたとえを紹介しています。
「アメリカバイソンが嵐を乗り越えるために、あえて嵐に向かって走り込む。
嵐を最も早く抜ける方法は、逃げることではなく正面から突き進むことだ、というたとえです」
AIに対しても同じ姿勢が必要だとTim氏は語っています。
「私たちは、嵐に入る前からすべての答えを持っているわけではありません。
すでに嵐のただ中にいて、その中で試行錯誤しながら答えを見つけていく必要があります」
そして最終的には、Drupalはこの変化を乗り越え、より強い存在になると確信されています。
「どのような新しい世界が待っていようとも、Drupalはそれを乗り越え、より強い存在として前に進んでいける、非常に良い立ち位置にあると思います」
25年続くソフトウェアとしてのDrupalの今後ー「これまでで最大の波」の正体
DrupalCon Nara に登壇したTim氏(DrupalCon Nara 2025会場)
Drupalは25年続くソフトウェア。ソフトウェアとしては、非常に長い歴史を持っています。Tim氏は、これから訪れる変化を「これまでで最大の波になる」と表現しました。
「Drupalは25年の歴史を持つソフトウェアですが、今まさに次の進化と、新たなダイナミックな変化の瀬戸際に立っています」
その背景には、Drupal 7から8への移行で行われた構造的な変革があるといいます。
「DrupalはAIに対して非常に良いポジションにあります。それは、Drupal 7から8へ移行する際に行った構造的な変更によるところが大きいのです」
Tim氏は、これからのDrupalの進化、そして次の25年に強い期待を寄せていました。また、今回の来日を通じて、Tim氏は日本のDrupalコミュニティに対する認識を大きく改めたといいます。
「実際に訪れてみて、日本には活発で魅力的なプロジェクトに取り組む企業が数多くあることを実感しました。日本のDrupalコミュニティの強さは、非常に目が開かれる経験でした」
日本で初開催となったDrupalConは、Drupal Associationと日本のコミュニティとの関係を、より一段深いものへと押し進める象徴的な出来事となりました。最後にTim氏は、Drupalの未来について次のように語っています。
「Drupalの変革はとてもエキサイティングなものになるでしょうし、これからの25年が本当に楽しみです」
まとめ
Drupal CMS、そしてAI。二つの大きな変化が同時に進む今、Drupalは「これまでで最大の波」に正面から向き合っています。
逃げるのではなく、進む。答えは、進みながら見つけていく。Tim氏の言葉からは、25年続くオープンソースコミュニティとしての覚悟と、自信がはっきりと伝わってきました。
DXTimesでは、今後もDrupalの進化と、その背景にある思想を追い続けてまいります。
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