【第2回】なぜDrupalは「企業・行政」に選ばれ続けるのか

Drupal

セキュリティと信頼性から見る、Drupalの強み

— Drupal創設者 Dries Buytaert 氏インタビュー 2 —


2026年、世界中で愛されるDrupalは誕生から25周年という輝かしい節目を迎えました。この記念すべきアニバーサリーイヤーに合わせ、昨秋のDrupalCon Naraで語られたリーダーたちの貴重なメッセージを特別連載としてお届けします。

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DrupalCon Nara 2025_Dries_QA

会場からの質問に回答するDreis氏(DrupalCon Nara 2025)

なぜ今、「企業・行政×Drupal」なのか

第1回では、Drupal創設者 Dries Buytaert 氏が語る「AI時代におけるオープンソースの進化」を紹介しました。
AIという大きな技術変革の中で、Drupalは“恐れ”よりも“可能性”を選び、慎重かつ思想的に進化しようとしています。
では、そのDrupalがなぜ長年にわたり、企業や行政機関といったミッションクリティカルな領域で選ばれ続けてきたのか。
その答えは、「セキュリティ」と「信頼性」に対する一貫した姿勢にあります。
本記事では、Dries氏の言葉をもとに、Drupalがエンタープライズや公共分野で評価される理由を紐解いていきます。

 

日本企業は「慎重」、だが目指すゴールは世界共通

インタビューの中でDries氏は、日本企業についてこう語っています。
「日本の組織は、新しい技術の導入に慎重だと感じています。」
 

実際、日本ではオンプレミスからクラウドへの移行も、欧米に比べて時間を要しています。
AIに対しても同様に、「セキュリティ」「データの扱い」を理由に慎重な姿勢がとられています。
しかしDries氏は、同時にこうも指摘しています。
「ただし、目指しているゴールは世界中で共通です。少ないリソースでより多くの成果を出し、顧客体験を向上させたい。」
効率化、ROIの向上、より良いユーザー体験。これらは日本企業も、海外企業も変わらない課題です。
AIは、それらを大きく前進させる可能性を持つ。
だからこそDrupalは、「慎重さ」を前提にしながらも、企業・行政が安心して使えるAI活用を模索しているといえます。
 

データを「外に出さない」AIという選択肢

利用者自身がコントロールする

Drupalが重視しているのは、「すべてをAIに任せる」ことではありません。
むしろ、どのデータをAIに渡すのかを、利用者自身がコントロールできることを大切にしています。
「企業や政府機関にとって、データは最も重要な資産です。それを無条件に外部へ渡すべきではありません。」
Drupalでは、AIを活用しながらも、

  • 機密情報は外に出さない
  • 内部データは内部で処理する

といった設計が可能になるよう配慮されています。

データ主権を重視した設計思想

そこでDries氏は、Drupal AIの特徴として「抽象化レイヤー(abstraction layer)」の存在を挙げていました。Drupalが企業・行政から信頼される最大の理由のひとつが、このデータ主権を重視した設計思想です。これにより、組織は以下のような選択が可能になります
 

  • 利用するAIプロバイダを用途ごとに選択できる
  • OpenAIなどの外部クラウドに依存しない構成が可能
  • 自社データセンターやオンプレミス環境でAIを動かせる
  • 個人情報や顧客データを外部に送らずに済む

つまりDrupalは、「AIを使うか/使わないか」ではなく、「どのAIを、どこで、どう使うか」を組織が主体的に決められる設計を提供しているのです。
これは、セキュリティやコンプライアンスが最重要視される企業・行政にとって、大きな安心材料となります。
 

「AIが勝手に動かない」ためのガバナンス設計

もうひとつ、Drupalが強調しているのが透明性とガバナンスです。
Drupalでは、AIが関与するすべての変更や提案について、

  • 何がAIによるものか
  • なぜその提案が行われたのか

を可視化する仕組みが用意されています。
さらに、

  • AIの操作には人間のレビュー・承認を必須にできる
  • 最終判断は必ず人が行う

という「Human in the Loop(人間が最終判断する)」設計が徹底されています。

「私たちは、AIがすべてを勝手に決める世界を望んでいません。プライバシーや信頼を損なうことがあってはならないのです。」
ブラックボックス化しがちなAIに対し、説明責任と統制を組み込む。この姿勢こそが、Drupalが“企業・行政向けCMS”として評価される理由なのではないでしょうか。
 

オープンソースであることが「安心」につながる理由

一見すると、「オープンソース=不安」と感じる人もいるかもしれないですが、Drupalの場合、その逆です。

  • ソースコードが公開されている
  • 世界中の開発者によるレビューが行われている
  • 問題が隠されず、改善が積み重ねられる

この透明性こそが、長期的な信頼につながっています。
またDrupalは、非営利団体であるDrupal Associationによって運営され、
 

  • DrupalConなどのイベント収益
  • 認定パートナープログラム
  • 広告・協賛

といった収益をすべてプロジェクトに再投資されています。
営利目的に振り回されず、公共性を保ちながら進化し続けている点も、行政・大企業にとって重要な評価ポイントとなるでしょう。
 

まとめ|選ばれ続ける理由は「思想」と「設計」にある

Drupalが企業・行政に選ばれ続ける理由は、単なる高機能CMSだからではありません。
「AIはあくまで支援役です。最終的な判断は、人間が行うべきだと考えています。」
というDeris氏の言葉にあるように、それを実現できる

  • データを守る設計
  • 人間が最終判断するAI
  • 透明性の高いオープンソース
  • 長期運用を前提としたガバナンス

これらすべてが、「信頼できる基盤」としてのDrupalを形作っているのです。

次回【第3回】では、25年以上続くDrupalコミュニティの秘密と、日本への期待について、Dries Buytaert 氏の言葉をもとにさらに深掘りしていきます。