【第3回】25年以上続くDrupalコミュニティの秘密と、日本への期待
25年以上続くDrupalコミュニティの秘密とは
— Drupal創設者 Dries Buytaert 氏インタビュー3 —
2026年、世界中で愛されるDrupalは誕生から25周年という輝かしい節目を迎えました。この記念すべきアニバーサリーイヤーに合わせ、昨秋のDrupalCon Naraで語られたリーダーたちの貴重なメッセージを特別連載としてお届けします。全3回にわたってお届けしてきた創設者Dries Buytaert氏による特別連載も、本記事が最終回となります。
OSSが「続かない」中で、なぜDrupalは25年以上続いているのか
オープンソースソフトウェア(OSS)の世界では、多くのプロジェクトが生まれては消えていく時代です。技術的に優れていても、数年で開発が止まり、コミュニティが分散し、結果として使われなくなるケースは珍しくありません。その中で、Drupalは25年以上にわたり、世界中で使われ続けているOSSです。
Drupal創設者の Dries Buytaert 氏は、この「継続性」こそがDrupalの最大の価値のひとつだと語っています。
「Drupalは一時的なブームではなく、長期的に進化し続けることを前提に設計されてきました。」
では、なぜDrupalはこれほど長く続いてきたのでしょうか。その答えは、技術だけでなくコミュニティの設計思想にありました。
国境を越え、多くのビジネスリーダーやエンジニアが彼の知見を求めて集結(DrupalCon Nara 2025 会場風景)
コミュニティが持続する仕組み
コントリビューション文化が「当たり前」として根付いている
Drupalコミュニティの特徴として、Dries氏が繰り返し強調するのがコントリビューション(貢献)文化です。Drupalでは、「使う人」と「支える人」が明確に分断されていません。
利用者自身が、何らかの形でプロジェクトに関わることが自然な行為として受け入れられているのです。
「オープンソースは、受け取るだけの関係では長続きしません。
何かしらの形で貢献することで、コミュニティは健全に成長します。」
貢献の形は「コード」だけではない
Drupalにおける貢献は、コードを書くことだけを意味しない。
- ドキュメントの整備
- バグ報告
- 翻訳
- イベント運営
- 初心者へのサポート
こうした多様な貢献の形が正式に評価される仕組みが、参加のハードルを下げ、裾野の広いコミュニティを支えています。
「すべての人が優れたプログラマーである必要はありません。それぞれの得意分野で関われることが重要です。」
情報発信の変化とローカライズの重要性
ドキュメント中心から、動画・対話型へ
Drupalコミュニティの情報発信も、時代とともに変化しています。かつてはテキスト中心だった公式ドキュメントに加え、現在では
- 動画コンテンツ
- セッションアーカイブ
- カンファレンス配信
など、学びやすい形式が重視されるようになってきています。
Dries氏は、これを「新しい世代にとって自然な変化」だと捉えています。
「学び方は世代ごとに変わります。だからこそ、伝え方も進化し続ける必要があります。」
翻訳・ローカライズがコミュニティを広げる
もうひとつ重要なのが、翻訳とローカライズです。英語が中心になりがちなOSSの世界において、母国語で情報を得られることは参加のハードルを大きく下げます。
Dries氏は、日本を含む非英語圏のコミュニティに対し、翻訳活動の価値を強調しています。
「翻訳は単なる作業ではなく、コミュニティを広げる重要な貢献です。」
日本の開発者・企業へのメッセージ
Meetupという「顔の見える場」の力
Dries氏が特に重視しているのが、Meetupの存在です。オンラインが主流になった今でも、実際に顔を合わせる場には特別な意味があり、日本各地で行われているDrupal Meetupは、これからの成長において重要な基盤になる、と語ります。
「Meetupは信頼を築く場です。
人と人がつながることで、コミュニティは強くなります。」
若い世代への期待
またDries氏は、若い世代の参加に大きな期待を寄せています。大学や教育機関との連携、学生のコミュニティ参加は、Drupalの将来を左右する要素のひとつです。
「次の25年を支えるのは、今の若い開発者たちです。」
日本においても、次世代が自然にOSSに触れ、参加できる環境づくりが重要になっています。
まとめ|コミュニティがあるからDrupalは続く
Drupalが25年以上続いてきた理由は、単に優れたCMSだったからではありません。
- 多様な貢献を受け入れる文化
- 変化し続ける情報発信
- ローカルコミュニティの存在
- 次世代への投資
コミュニティそのものが進化し続けてきたからこそ、Drupalは続いているのです。今後もDrupalConをはじめとしたイベントは、その中心的な役割を果たし続けることでしょう。
Dreis氏を囲むコミュニティイベント参加者(DrupalCon Nara 2025 会場にて)
DXTimesとしても、この連載を通じてDrupalというソフトウェアだけでなく、それを支える思想とコミュニティの価値を伝えてきました。
この第3回をもって連載は完結しますが、Drupalの物語はこれからも世界各地や日本で続いていく様子を発信し続けていきます。
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