Drupalベースの共同研究プラットフォーム
J・ポール・ゲティ美術館(ロサンジェルス)のゲティ財団が運営する研究機関、Getty Research Instituteが、多くの研究者がネットを駆使して共同研究を推進する際のコラボレーション・プラットフォームを、Drupalをベースに開発しました。
離れた場所にいる複数の研究者が、共同研究の作業を進めるケースは多数ありますが、インターネットを駆使したとしても、複雑さが増して、統制がとれなくなってしまいがちです。電子メール、メッセンジャー、クラウドストレージ、プロジェクト管理ツールなど、さまざまな道具が存在するが故に、かえってあの情報はどの媒体のどのツールで共有されたのか憶えておくことすら難しくなってしまいます。
Getty Scholars’ Workplace(直訳すると「ゲティの研究者たちのための仕事場」)は、Drupal上のプラットフォームで、美術史などの研究者が協調作業をする環境を提供します。各研究者は、いろいろなプラットフォームを駆使する必要はなく、Getty Scholars’ Workplaceだけを使って複数のプロジェクトを並行して走らせたり、別のプロジェクトに参加したりすることができます。
共同研究の参加者は、ちょうどデザイナーやライター、校正者、編集者などのウェブサイト関係者たちがCMSを使って共同でウェブサイトの構築・運用を行うような感覚で作業を進めることができます。
プロジェクトは6つの主要なツールを使って推進します。
「Bibliography(文献目録)」ツールは、個々のアイテムについての情報を手入力するほか、既存の引用文献管理自動化ソフトであるZotero(https://www.zotero.org/)のファイルを読み込ませることもできます。「Image(画像)」ツールで画像をアップロードしてギャラリーを生成し、「Comparison(比較)」ツールは仮想的なライト・テーブル(スライドなどに下から光を当てて見やすくするテーブル)として画像を比べ、特徴を際立たせるために使います。「Transcription(転写)」ツールで手書きの文献などを扱い、「Essay(エッセー)」ツールで文章を生成します。「Timeline(タイムライン)」ツールを使って美術史の年代管理を行います。
Drupalをベースにしているため、InstagramやFlickr、Twitterなどの一般向けツールに比べると、Getty Scholars’ Workplaceは、インストールや設定、実際の運用に当たって、多少の知識や経験が必要となりますが、画像をInstagramで共有し、テキストはSkypeでやりとりした場合、それらを統合する手間を考えれば、Getty Scholars’ Workplaceの初期設定などは物の数ではないでしょう。編集や閲覧の権限の付与などもお手の物ですから、学生を巻き込んでの共同研究などにも威力を発揮するはずです。