オープンソースのコミュニティへの貢献

オープンソース・ソフトウェアのコミュニティの主眼は、そのソフトウェアの開発とブラッシュアップです。Drupalの場合であれば、コアの開発、コントリビューテッド・モジュールの開発など主にDrupalで実現する機能を新しく追加したり、既存の機能を改善したりするソフトウェア・エンジニアが世界各国に居て、今日も大量のコードを書いています。

開発者の数が多ければ、具体化する機能も増えます。また、実際に使われる人気の高いモジュールは、それだけ多くの人が実際に使うことによって潜在的だった不具合が表面化します。つまり、テンポよく品質が向上します。

仮に1社のエンジニアだけで開発を行うとすると、かけられる人数に応じてコストが莫大になりますから、営利企業の場合はどうしても取捨選択が必要になります。しかし、オープンソースであれば、それぞれの人々が違った観点から使ったり作ったりするので、人気が高まれば機能が充実し、安全性を含めた信頼性が高まるという好循環が生まれます。

 

Drupalの場合はモジュールのほかにもさまざまなテーマを作って公開している人々が大勢います。これによって、構築しようとするウェブサイトの目的やブランドのイメージ、求めるテイストなどにフィットしたデザインを数多くの候補の中から選んだり、それらを参考にしてカスタマイズしたり、自分たちで作ることも可能になります。

 

しかし、コミュニティの発展に貢献できるのは、コンピュータの使い方に長けたデザイナーとエンジニアだけではありません。

 

例えば、Drupalの導入を企業や組織に進める場合、モジュールが実現する機能を羅列するだけでは説得力がありません。ユーザー側、つまり導入を検討している企業や組織の側の観点から、採用を決定する上で何を重要視するのかを理解している人であれば、魅力的な提案ができるようになるはずです。

スケーラビリティを重視する企業もあれば、多言語対応の開発と運用の利便性を大事に考える企業もあります。セキュリティやレスポンス性能を最優先する場合もあれば、同じコンテンツやデータをスマートフォンにもデジタルサイネージにも活用したい場合もあります。新製品発表などのトラフィック集中に備えて設備を設計すると日常的にはオーバースペックになってしまうサイトの場合には、一時的な大量トラフィックへの対応が死活問題ですし、ECサイトが物流のバックヤードシステムとリアルタイムに連携していることが戦略的な優位性にとって不可欠という企業もあるでしょう。また、エンドユーザーに提供する経験(UI/UX)の新しいトレンドに応えていくことも必要不可欠でしょう。

 

こうした動きをコミュニティに正しくインプットすることが、イノベーションを続けるコミュニティの舵取りにとって極めて重要です。世界各国の市場動向が開発者のコミュニティにタイムリーに伝われば、使われるコードを書きたいと望む開発者たちを刺激して、Drupalの高度化が進みます。

 

すでにヘッドレスやデカップルドという言い方で、Drupalは単なるCMS(コンテンツ管理システム)の枠組みを超えて、デジタル体験の全体を支えるプラットフォームへと進化を遂げています。

コードを書いたり、テーマを作ったりするスキルがなくても、マーケターやエンドユーザーの立場からでもコミュニティーに貢献することは十分に可能ですし、言い方を変えれば、こうした貢献が各国から集まらなければ、コミュニティーの活力は弱まっていってしまいます。

 

 

 

【参考情報】

How do you start contributing to Drupal without code?