教育現場のデジタルデバイド

ITを使える人と使えない人、活用している集団としていない集団、ITで競争力を高めている国と高めていない国との間に存在する断絶をデジタルデバイド(divideは分割、分裂、分水嶺などの意味)といいます。

COVID-19の影響により、世界各国で学校が閉鎖されました。日本の場合は春休みが終わって新学年、あるいは、新入学の時期になっても通学することができず、自宅学習を余儀なくされました。特に、小学校や中学校の1年生になる歳の子供たちは、ふつうな期待と不安に胸をふくらませて迎える入学式も行われず、新しいクラスメートの顔も分からないまま、学校から出される課題を自宅でやって、まとめて提出するという前代未聞の学校生活を始めることになりました。

日本では、大学の多くがオンライン授業に踏み切りました。スマートフォンやタブレットと、インターネット接続環境があれば、どこでも講義に出たり、課題を提出することができます。大学生であれば、パソコンやブロードバンド回線はなくても、スマホやWi-Fiは利用できる人が多いでしょう。
しかし、公立の小学校や中学校の場合、不公平が生じてはいけないので、Eラーニングによる授業は困難です。

テレビに比べればインターネット回線の家庭への普及率は低いですし、スマホやタブレットの普及でパソコンを持っていない家庭も増えているようです。デジタルネイティブの若者たちの中には、フリック入力のスピードは驚異的でも、キーボードからの入力はたどたどしいという人も多いようです。スマホやタブレットでさえ、全家庭に普及しているわけではありません。
アメリカでもカリフォルニア州などはネット環境のない家庭の子供たちにインターネット接続とタブレットなどを無償で提供して、遠隔授業を受けさせる取り組みがありましたが、こうした動きは全米のすべての子供たちに行き渡っているわけではないようです。

このように、経済格差などを背景にした、家庭のIT環境の優劣によって生じるデジタルデバイドは、単に家庭学習の機会があるかないかということに留まらないという記事がありました。
家庭にネット環境がなかったり、自分用のスマホを持たされていない子供たちと、ゲームやYouTubeに幼い頃から触れて、ソーシャルネットや検索も小さい頃から経験している子供たちとの間には、ネットを使った学習の効率にも大きなギャップが存在します。例えば、小学校の授業にタブレットを取り入れて、生徒たちに調べたり、クイズに答えたり、何かを書かせたり描かせたりするという場面があったとすると、普段から使い慣れている子供が難なくやってのける簡単な作業であっても、慣れない子供たちにとっては大変難しく、できたとしても長い時間が必要になってしまいます。
そして、家庭にネット環境がない子供に対しては宿題や勉強を自宅でネット使ってやって来なさいという宿題を出すこともできないですし、子供たちも自宅に戻って復習することもできなくなってしまいます。

このように教育現場のデジタルデバイドは複雑です。こうした状況は日本だけでなく世界各国で共通のようです。さらに、教える側の先生にも、さまざまな理由や事情でデジタルデバイドが存在します。
例えば年齢。やはり、年配の先生にとっては、パソコン、タブレットの操作や、インターネット接続についての基本的な知識や経験が不足しています。タブレットで宿題を出せとか、チャットで質問に答えろということになっても、使った経験がなければ、難しいタスクになってしまいます。

今後、教材がどんどんデジタル化されて、双方向のやり取りにネットが使われるようになると、慣れている先生と不慣れな先生では、授業の質に大きなギャップが生じてしまいます。従来から、生徒の側から先生を選ぶことは難しいので、担任や担当の先生次第で生徒の学習や学校生活は大きく左右されてきました。今は先生がどれだけデジタル対応してくれているかも重要なポイントになっています。例えば、プライバシーやセキュリティに熟知して、Zoomその他のWeb会議やタブレットのアプリやクラウドサービスを駆使して、活気のあるオンライン授業をしてくれる先生は何割くらいいるものでしょう。

例えばアメリカの場合、州や郡など住んでいる地域によっても、また人種間でもデジタル格差が存在するようです。今後、学校の授業が宿題だけでなく、入学願書の提出や就職活動においてもネットを使うことが前提となってくることは容易に予想できます。コロナ後の世界では、生活や仕事あらゆる場面でデジタルの演じる役割が大きくなるでしょう。今の格差が将来の格差の原因になってしまいます。

もはや自己責任とかいうレベルではなく、州や国としてどうするかという重大な問題であることが、新型コロナウイルス感染症の影響で浮き彫りになったとも言えそうです。


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