テーマパークのDX

Digital Marketing

世界には数多くのアミューズメントパーク、テーマパークがあって、人気です。ここにもDXの大きな波が押し寄せているようです。

 

テーマパークのモバイル・アプリは、以前は面白みに欠けるものが多かったようですが、なにか理由があるでしょうか。

アプリを開発する目的はいくつかありそうです。まずは何と言っても集客です。アプリを通じて情報を発信し、入園券を売ることは、営業面で最も大切です。

 

アクセス方法や近隣のホテルの情報、園内のマップなどもアプリのコンテンツとして定番です。

アプリであれば、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)といったいわゆるxRを使って、テーマパークのファンに向けた特別な体験を届けることもできます。

テーマパークからして見れば、位置情報を使って動線を分析したり、購買行動とその他の行動の相関を調べたりすることもできます。

けれども、こうした機能を提供するためにiOSとAndroidのアプリを開発し、連携するWebを改修したり更改したり、チケット販売機やレストランの食券販売機と連携させたりするとなると、相当な開発規模。投資対効果という点から見て、なかなか難しい判断だったのではなでしょうか。

 

しかし、それはアミューズメント業界のことですから、すぐにアプリを活用した顧客体験の向上の重要性に着目し、さまざまな面白いアプリが開発されています。来場者の過半数はデジタルネイティブなのですから、スマホを使って、その場での経験の質を上げようとするのは当たり前。パーク側はこれに応えていく必要があります。

 

さらに、5GやIoTを活用すると、パーク内の経験をさらに複合的に進化させることもできそうです。在庫管理やPOSとの連動で、グッズや飲み物が売り切れたまま放置されることはなくなります。施設のメンテナンス性も向上させられるので、予防保全によって、ライドの故障も減り、故障修理時間も短縮されて、安全性を高めつつ、楽しむことの時間を長くすることも可能です。

 

AI(人工知能)を活用すれば、バーチャルガイドを任命することも可能になります。初めて訪れたテーマパークは広大な敷地に施設が点在していて、東西南北も分かりません。レストランやトイレの場所も分からないし、事前に調べていた乗り物の場所も分かりません。マップを頼りにたどり着いても、もしかしたら2時間待ち3時間待ちの行列の最後に並ぶことになるのかも知れません。食事に行ったレストランでも長蛇の列で子供が泣き出してしまう可能性だってあります。AIの助けを借りて予約してしまえば、指定の時間に指定の場所へ行けば、乗り物に乗ったり食事を受け取るのに、長い時間待つ必要がなくなるかも知れません。

 

チケットも、QRコードを使ったり、RFID無線タグ付きのリストバンドを使ったりすることで、来場者はいちいち紙のチケットをポケットから取り出したり、首からさげたホルダーなどに入れる必要がなくなりますし、パークのスタッフからしても、いちいちチケットの内容を目で確認する必要もなくなります。

 

night theme park

 

デジタルを活用することのメリットは、このほかにもいろいろありそうですが、最大の利点は、経験のパーソナル化ではないでしょうか。

紙のチケットで入場と退場を行っていると、その日一日で何人の入場者がいたのかは、売れたチケットや出口で回収したチケットで数えることができますが、誰が何を楽しんで、何を食べて帰ったかまでは分かりません。何時間、パーク内にいてくれたのかさえも分からないことになります。

 

日常の生活では、AmazonやNetflixなどで、次に何を読むべきか、自分に合いそうな映画はどれとどれかなど、さまざまなリコメンドが画面に次々に表示されて、これまでの購買履歴や、ページ内で何に興味を示したかといった、個人に紐づいた情報に基づいて、いろいろな提案を受けて、その中から選ぶことに慣れている人々が、いざテーマパークに行ったら、アトラクションの内容を調べたり、待ち時間を検索したり、行き方を地図で確認したりと、何から何まで自発的に動かなければならないというので、経験の質は高いとは言えないでしょう。

もちろん、プライバシー保護や個人情報保護は最重要なことですが、家族連れと若者に、同じ情報を押し付けるだけでは、デジタルを十分に活かしているとは言えません。

 

いい経験をして帰れば、SNSで高い評価が拡散され、その人も次の機会に同じテーマパークを選んでくれる可能性が高まります。テーマパークのデジタル投資には、十分なリターンが見込めるのではないでしょうか。

 

 

<参考情報>