出版業界のDX
インターネットは出版業界の将来に暗い影を落としました。ネットの普及するよりも前から書籍と雑誌の売上は減少し続けていたようですが、リアルの書店は世界的にも激減しています。
当初はAmazon.comに代表されるオンライン書店が、立ち読みはできないけど人の手に余り触れていない本がすぐに安く届き、なによりもリアルの本屋さんに比べて圧倒的な品ぞろえを誇っていて、オンライン書店の急成長に呼応して町の本屋さんが減るということが続いていました。
今では電子書籍がコミックを中心に広く読まれるようになっていて、通勤電車の中で新聞や雑誌を読む代わりにスマホの画面に見入っている人が増えました。
デジタル出版は確実に伸びているようです。つまり、出版業界は印刷、流通、再販価格維持といった昔からのビジネスから、デジタルへと軸足を移してきていて、そのためにITサービスプロバイダーとの連携や情報技術に関する知識やノウハウが不可欠になっています。特に著作権を保護したり、デジタル資産を守るための情報セキュリティについての知見は不可欠です。
オーディオブックはネットやスマホの普及よりも前、カセットテープの時代からありましたが、日本よりもアメリカで広く使われていたようです。背景には自動車で移動する機会が多いことが挙げられそうです。ポッドキャストも日本では想像もできないほどアメリカでは広く利用されていて、個人や小グループでも人気を博するポッドキャスターが大勢いるようです。
電子書籍にせよオーディオにせよ、以前のような国民の多数が読むような大ベストセラーは減ってしまっていて、多種多様な作品が広く浅く読まれるようになっているようです。
そうするとオンライン出版社にとってはSEOやブランドロイヤルティの確保が重要になります。売っているのはコンテンツではなくて、顧客サービスや顧客体験ということになります。ネットでの行動履歴などから適切なお勧めコンテンツを最適化するAIなどのテクニックを使った宣伝が主流になっていくものと思われます。
自費出版も増えているようです。電子書籍であれば一般からの参入のハードルが下がります。例えば技術書などはその技術がある程度の知名度を獲得するまで日本語の紙の書籍は出版されませんが、電子書籍であれば比較的簡単に早く手に入れられるようになっています。ここでも情報を探している人と電子書籍を結びつけるためのデジタルマーケティング技術が不可欠です。
出版業界は通信トラフィックを収益化するビジネスに急激にシフトしていますが、業態が大きく変わっただけで、広い意味で誰かが書いたものを別の誰かが読むために対価を払うという根本の部分は変わっていないようです。
最近、本屋さんで紙の本を買っておられますか?
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