商業施設のデジタル
店舗など商業施設のデジタル技術は以前から発展が目覚ましい分野でした。というのも、商業ではお金が動きます。新技術を取り入れることで、消費者の興味を惹いて、売上が増えたり、従業員の業務が効率化できてコストが下がったりモチベーションが上がったりすれば、デジタル技術に限らず、投資に見合うリターンがありますし、常に厳しい競争にさらされていますから、他店に引けを取るわけにはいきません。
ここでもコロナがデジタル化を加速したり、新しい用途が付け加わったりしています。世界中の店舗の入り口に体温を計測するタブレットなどが置かれています。混雑状況はAI監視カメラがリアルタイムに掌握しています。接触を避けるためにセンサーを使った自動ドアの導入や、エア・クオリティ測定装置と連動した空調システムが導入されています。コロナさえなければ、こんなにもたくさんのサーモグラフィが実装されることはなかったでしょう。
デジタルサイネージは、単なる情報の表示装置から、スマートでインテリジェントなデバイスに進化を遂げました。一方的に情報を表示するだけでなく、来店客とインタラクティブなやり取りをして、商品をリコメンドすることができるようになっています。
顔認証などによって年齢や性別、場合によっては人種などを推定して、それに合うコンテンツを表示することには多くの国の人々がアレルギー反応を示しています。たとえ、それが個人の特定にはつながらなくても、気味が悪いということでしょう。
値札の電子化は現在の紙の値札に比べて格段にコストがかかるのでなかなか普及していませんが、量販店や大型スーパーマーケットなど、連日、ダイナミックに値段を変更したい店舗を中心に徐々に採用が始まっています。低消費電力で視認性のよい電子ペーパーの値段が下がれば一気に普及するのかも知れませんね。
接客の無人化も進んでいます。ロボットにものを運ばせたり、AIや遠隔地にいる人間にネットワークを介して接客する技術は当たり前になりつつあります。
業務効率化のためにRPAの導入が進んでいますが、単調作業はPCの中のロボットだけでなく、調理場や倉庫のロボットにも活躍の場を提供する材料です。調理ロボットの中には、すべての工程をロボット化しようという試みもありますが、人と一緒に働くことを念頭に設計されたものも多そうです。例えば、ハンバーガーショップの場合、パテを焼くとかひっくり返すとか、フレンチフライを揚げるといった作業は、開店から閉店までひっきりなしに続く単調作業ですからロボットに向いています。来店者数その他の情報をベースに焼きはじめや揚げはじめのタイミングを上手に決められれば本当に便利そうです。けれども、焼きあがったものを野菜やチーズとバンズに挟んだりソースを塗ったりするという動きは、焼いたり揚げたりする動きと全く違うので、1台のロボットで実現するよりも、人との協調で完成させる方が安くて確実でしょう。
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