旅行業界のDX

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新型コロナウイルス感染症の影響が強烈だった業界の1つが旅行業界でしょう。観光業は世界のGDPの1割を占めるそうです。

海外渡航は制限され、ロックダウン期間中には人々は自宅から出る機会さえ激減し、その後も人の往来に対する規制を緩めた国では第二波、第三波の感染者増加が見られました。

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日本ではGoToトラベルなど旅行に係わる事業者を支える枠組みが打ち出されて一定の効果を生んでいるようです。マスクや手の消毒、入口での検温やアクリル板などのシールド、行列を作る際に間隔を空けるといったいわゆるニュー・ノーマルや新しい生活様式により、仮にコロナの前と同じだけ人の移動があっても、感染のリスクは低くなっているのかも知れません。

けれども多くの人は、新型コロナウイルスへの感染を警戒しています。日本の場合、全国に外国からの旅行客が溢れていた2019年のような状況が再び訪れるには相当な期間が必要になりそうです。

 

もちろん、感染症の影響はネガティブなものですが、急激にピンチに陥った業界は、これまで手をつけずにいた、あるいは消極的だった改革に着手しました。そのため新しいアイデアが試みられ、新技術の導入に向けた投資が行われ、少ない従業員で多くの仕事をこなせるように、業務プロセスにも改革のメスが入りました。

ですから、もちろん感染した人々や、経済的に危機に陥った人々を忘れてはなりませんが、単に技術革新とか業務改革という面に絞ると、少し長い目で見ればポジティブな力が働いたと言えるのかも知れません。

 

COVID-19以後の旅行や観光業界の変化には、以下のような予測や傾向が見られます。

  • 国内旅行は増え、海外旅行は減少。密な空間での長いフライトは敬遠され、ロードトリップが注目を集めました。旅先のアクティビティも、屋内(例えば、劇場は美術館、体育館など)よりも屋外のもの、キャンプやトレッキングなどが選ばれる傾向にあるようです。
  • 団体旅行は減少。屋内での大規模なパーティや結婚式その他の式典などは敬遠されます。
  • 出張は激減。Zoomに代表されるWeb会議の活用が一般化しましたので、事業運営において移動が必要な場面が極端に減りました。
  • GoToトラベルの効果だけでなく、世界的にも高級宿泊施設への人気の偏りがあるようです。これは高額な施設ほど安全対策にも投資できて、かつ、それをアピールすることで予約の際の安心感を提供できているためのようです。
  • チェックイン手続きを非接触で行う(または接触を最小限にする)技術の導入が進み、フライト中の飲食の提供は減り、マスク着用が当たり前になりました。

 

顔認証によるパスポートのチェックや旅客機への搭乗システムは日本に限らず各国で導入が進んでいるそうです。生体認証と非接触技術が、特に国際観光産業の復活にとっては鍵となるようです。

もちろん、旅行客が安全を求め、旅行業界が安全を提供することが導入の主目的ですが、こうしたデジタル化投資は、かならず省力化や効率化につながるはずです。

 

チャットボットによる問い合わせ対応が増えれば、窓口での係員との対面によるやり取りの機会を減らすことができます。バーチャル・アバターがフライト情報を提供するようになったり、モバイルアプリが旅行関係の書類のデジタル化、つまりは、例えば紙のチケットをスマホ画面のQRコードに代えるといったペーパレス化が進んだりしました。PCR検査結果を受け取るためにアプリを利用している航空会社もあるそうです。

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乗客がスマートフォンを持参していることがほぼ確実な時代なので、チェックインのためのキオスクなどを何台も並べることの意味合いは低下していますし、書類のやり取りが減れば空港業務も税関業務も効率化が進みます。

 

生体認証などによって、誰がいつ、どこを通ったかが分かるということは、仮に今後、COVID-19とは別の感染症が広がった場合にも有用な情報を収集する手段ができたということにもなります。

 

実際、旅行業界が大変革を迫られたのは今回が初めてではないようです。2001年9月のアメリカ同時多発テロの惨事の後、空港などでのセキュリティチェックがもの凄く厳しくなり、国際空港には長い行列ができました。フライト予定時刻の何時間も前に着いていなければ乗り遅れると旅行客は早めに空港へ向かったものです。

関係者は旅行者に安全と安心感を取り戻してもらうために、さまざまな技術が導入されました。

今、再び、信頼回復という大きな課題に立ち向かう旅行業界は、デジタル技術を活用して、回復のスピードを少しでも早めようと日夜努力を続けているようです。

 

 

 

<参考情報>