公共部門のテクノロジー
政府機関や地方自治体などのデジタルへの取り組みはパンデミックを経験してから世界中で大きく進展したようです。ロックダウンや外出自粛その他の行動制限がかかる中で、市民に対するサービスを継続させるには、技術の取り込みが比較的遅いとされる公共機関であっても迅速に動く必要があったのでしょう。
どこの国でもお役所と言えば旧態依然としていて、縦割りで、柔軟性がなくて、サービス品質には無関心と相場が決まっていたようです。
それでも感染症対策を続けながら住民サービスを継続し、税収を確保し、公共機関の職員の雇用を守るためにはITを受け入れることが必要不可欠でした。
従来、住民は近場だろうが遠方だろうが、役所には直接足を運ぶのが基本でした。一部のサービスは郵便でも対応して貰えましたし、電話で教えてもらうこともできましたが、基本的には役所にいって、分かりにくい組織図を睨んだり、受付係に質問して、しかるべき窓口を見つけて、そのフロアまで移動して、列に並んで、書式を受け取って、書類にもろもろの情報を書き込んで、署名したり押印したりして提出、処理を終えてくれるまで待機するというのが当たり前でした。
特に申告書の提出時期などには長い行列ができましたし、質問をする市民も多く、回答するにも時間がかかっていました。
多くの申請作業がオンラインで可能になってきています。これを支えているのは職員と市民が情報を共有することができるデジタルプラットフォームの導入と、クライドコンピューティングです。
市民はパソコンやスマホを使って市の提供するサービスにアクセスすることが可能になりました。チャットボットなどを使って難しい申請の方法や申請書の作成方法も学べるようになっています。コロナワクチン接種やワクチンパスポートもオンラインで申請できますし、助成金の申請もネットで行うことが可能で、接種証明はQRコードとしてスマホの画面で提示することが可能です。
一部の都市では市の職員そのものが外出できなくなってしまいました。リモートワークは民間企業だけでなく公共部門でも導入が進んだようです。こうした動きに伴って、サイバーセキュリティーの確保が大きな課題として認識されるようになりました。
政府機関も民間企業と同様に、より少ない人数と労力でより多くの業務を遂行することが求められています。そのためデジタルに対する期待が高まりました。特にRPAなどに代表される自動化は、政府機関の定型作業や単純なチェック作業から職員を解放してくれる技術として期待されています。
また、AIを活用した分析は政府機関のサービスの質などについて深い洞察をもたらすと期待されています。質の高い公共サービスが提供されていれば、住民の満足度が高まるだけでなく、問い合わせやクレームの対応といった、やや後ろ向きの業務から職員が自由になります。そのため、住民サービスは住民に提供されるDX(デジタル体験)に左右されることになります。よりよいデジタル体験を提供することが、政府機関や地方自治体の職員の業務を改善することに直結する時代が来たようです。
SNSの利用についても十分なトレーニングが必要になりますね。
<参考情報>