マーケティング・オートメーションについて
マーケティング・オートメーション(MA)と聞くと、マーケティング活動を自動的に行ってくれるように感じますが、これはある意味では正しくて、ある意味ではまったくの誤解のようです。
基本的には、MAとは繰り返しの作業を自動化するものです。電子メールを送信するとか、ソーシャルメディアに投稿するとか、広告キャンペーンが人の目に触れるようにするといった作業は、人が行うととても時間がかかります。例えば、Excelに100人の名前とメールアドレスと、性別と年齢が書かれていたとして、18歳から25歳の女性にだけ電子メールを送り、本文の一行目には、個人的な感じを演出するために、送信先の女性のファーストネームを使って、「〇〇さん、お元気ですか?」という文章を入れるとしましょう。これを自分でやるとしたら、何分くらいかかりそうでしょうか。名簿が100人分ではなくて1万人分だったらどうでしょう。送信時刻も、キャンペーン当日の深夜零時から1時間以内などと指定されていたら? MAにとっては、こうした「作業」はお手の物です。予め条件を設定しておいて、メールの本文(1行目の呼びかけ以外の部分)を作っておけば、寝ている間にでもメールは自動的に送信されます。
よくある誤解は、MAを導入すると潜在顧客が増えるのではないかというもの。マーケティング用語の「ファネル」とは日本語では「漏斗(じょうご)」のことですが、日常生活で余り使われないのでイメージがわきにくいかも知れません。種などの小さな粒を、細い口のボトルなどに入れる時に便利な道具です。
MAは、種の数を自動的に増やすものではなくて、漏斗の流れをスムーズにするためのものです。同じ数の種を入れて、より多くの苗を育て、多くの実を結ばせるため、マーケターが試す様々な施策のうち、人間がやると非常に手間がかかる部分を自動化してくれるのがMAです。
MAを用いると、さまざまな施策の効果も数値として評価が可能になってきます。先ほどの電子メールマーケティングで、条件に合うメールアドレスが50件あったとして、メール本文中に記載したURL(かHTMLメールならバナーなど)をクリックされたかどうかで、効果を測定するとして、これも手作業だと結構大変でしょうが、自動化されていれば、もっと詳しく、リンク先での行動まで含めてトラッキングできます。
メールマーケティングの場合は当然、A/Bテストを行って、複数の文面や件名、キャンペーンそのものの内容やメールのトーンのうち、どういったものがどういったセグメントに刺さるのかを試行錯誤的に突き詰めていきます。
ここにも手作業で行うと気の遠くなるような反復作業ですが、自動化されていれば、どのような施策がどのような効果を生むのかについて、具体的な数字を伴った経験値が上がっていきます。
これを繰り返していくと、マーケティング施策について、次第にその成果について予測することも可能になります。メールを1万通出せば、どれくらい売上がアップするか、もちろんぴったりと予測することは不可能ですが、事前に大まかに分かるようになってきます。
そうすると、例えば、今年度の売上目標の総額が会社の予算として存在したとして、それを事業別とか製品別に割り振って、販売目標が立てば、リードを何件獲得すれば、どの程度の売上につながるかを、事業計画の時点でもある程度見積もることができるようになります。当然、目標は高めに設定されることが多いので、マーケターは、より多くのリードを獲得する方法や、コンバージョンの率を少しでも上げるための創意工夫と試行錯誤を続けることになります。
ここでも、反復する短調な作業は機械(=MA)にやらせて、人間であるマーケターは創意工夫の部分にフォーカスすることができるようになります。
やがてはこの創意工夫もAI(人工知能)がある程度は肩代わりしてくれるようになるでしょうが、それにはもう少し時間がかかりそうです。
予測が可能で、数値を使ってその予測の当たり外れや、売上などの会社への貢献が可視化されていれば、成功したら正当な評価を受けることにもつながりますし、うまく行かない場合にも軌道修正を早めに行うことができるでしょう。
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