アウトドアのDX
新型コロナウイルス感染症の広がりは、世界中でアウトドア・ビジネスの背中を押したようです。クラスターの発生は屋内がほとんどで、飲食業や劇場、映画館、交通機関などに大打撃を与えましたが、ロックダウン期間中に自宅にこもった人々は健康志向を強め、屋外でのアクティビティに積極的になりました。
例えば、アメリカで最も人気の高い国立公園の1つであるイエローストーンは8月に90万人近い人々が訪れ、これは史上2番目の数字だそうです。
公共交通機関よりも自家用車が好まれ、アクティビティもアウトドアが優先。時間に追われる計画よりも、ゆっくりリラックスして適度に動き、屋外での料理や食事をじっくり楽しむ人が世界中で増えているとのこと。
ここにもデジタルの波は大きく押し寄せています。まず、旅行の計画が完全にデジタルに移行しました。旅行者の多数派は団塊世代からミレニアル世代に移り、デジタルの活用はもはや前提となっています。テレビ番組からインスピレーションを得てガイドブックを買い、親戚や友達から経験談を聞いて旅行計画を立てる人は減っています。旅行会社のパンフレットにも昔日の効果はなく、冒険や経験の入り口はスマートフォンの画面に移行しました。
Recreation.govというスマホのアプリは、アメリカでは大人気。今年の春の3か月間で50万回と2019年の全ダウンロード数を上回ったそうです。
人々は、自分の健康管理にもデジタルを使います。Apple Watchは言うに及ばず、人々は自分の睡眠や歩行、ランニング、心拍数などを記録しています。新型ウイルスに健康が脅かされる中、自分の健康を自分で守るという意識が高まっているのでしょう。ロックダウン期間中の運動不足は、誰にとっても大きな心配事だったようです。
国立公園やキャンプ場、その他の屋外レクリエーション施設でもCOVID-19の影響を受けて、デジタルの活用が増えています。エリアへ流入する人々の流れをコントロールするため、入場の時刻を予約させるシステムが各地で導入されたそうです。人と人との接触の機会を減らすために、キャッシュレス決済の利用が加速しました。
こうした技術の導入は、訪れる人々にだけでなく、エリアを守る人々の仕事も変容させています。チケット販売窓口でチケットを売る必要がなくなり、さまざまな問い合わせにチャットボットが答えてくれるようになれば、森林を守るレンジャーたちは、「接客」以外の重要な業務に時間を多く割けるようになり、結果的には訪問者たちの安全・安心が高まります。さまざまな管理業務の自動化も進みます。
Web会議を活用するのは都会のオフィスワーカーたちばかりではありません。ベテランのメンテナンス要員は、自宅に居ながらにして、広大な敷地の中で発生する不具合を、現地に赴かせた不慣れな職員から、スマホのカメラで映像を送らせて、的確な判断をして指示を与えることができます。そうして遠隔で指示を受けている職員はOJTで仕事を覚え、やがては独り立ちできるようになります。ベテランは本当に自分が現場に行くべきときだけ移動すればよくなります。職員たちのライフ・ワーク・バランスの改善を支えるのもデジタルというわけです。
今後はワーケーションなどの広がりも予想され、都市への人口集中が次第に緩和されるようになるのかも知れませんね。誰も満員電車での通勤など望んでいないはずなので。
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