ブライダルビジネスのデジタル化
COVID-19により世界中の結婚式に影響が出ています。以前から、郷里を遠く離れた場所で挙式するカップルが、式場に呼べない地元の親戚や友達、あるいは療養中の家族などをWeb会議システムなどでつないで、披露宴の様子を見せたり、お祝いの言葉を送ったりすることは行われていました。もっと以前にはビデオレターの上映だったものが、Skypeなどが一般化する中で、リアルタイム、双方向が普通になってきたのでしょう。
パンデミックで外出すらできない事態が続き、挙式を延期するカップルがたくさんいたようです。それを受けて、完全にオンラインで完結する結婚式を提供する事業者が各国で登場しているようです。
デジタルネイティブたちのオンライン結婚式は、単純にZoomなどで大勢がオンラインでつながって、新郎新婦を祝福するだけではないようです。リアルの結婚式と同様に、衣装は素敵なドレスやタキシード。コンセプトに応じた背景画像も用意されます。披露宴で上映されるオープニング・ムービーやお祝いビデオ、BGMも準備します。ARなどを活用することもあるようで、新郎新婦がYouTuberでもない限り、いかにデジタルネイティブと言っても、コンテンツの準備はプロに任せた方が経済的かつ芸術的なのでしょう。
オフラインのコンテンツも重視されるようです。パーティーであればお酒やご馳走が並び、豪華なケーキが振る舞われるわけですが、Zoomで各自が用意する場合もあれば、主催者である新郎新婦が手配することもあるようです。そのほかにも手紙や、日本であれば引き出物、海外でも記念品を贈る習慣がある場合には、そういった手配も必要になります。また、当日の司会進行役をプロに依頼することもできるようです。
参列者の側から考えてみると、もちろん、自宅から結婚式場への移動の手間がないし、移動中や式の前後、最中の濃厚接触を気にせずに済みますが、例えば学生時代の友達の結婚式であれば、懐かしい面々との直接の再会といったことは、オンラインの画面越しになってしまいますし、出席者同氏の会話はWeb会議中慎まなければならず、あえてやるならテキストのチャットを交わすことになるのでしょう。
コロナ対策でオンライン結婚披露宴が始まる前から、ブライダル産業にもデジタル化の波が押し寄せていたようです。けれども、婚約指輪、結婚指輪やウェディングドレスの購入については、オンラインショッピングは敬遠されがちです。どうしても実物を見て、素材の感触を手で確かめたいという強いニーズがあるのでしょう。試着も重要です。
米国では、例えば、3着までのサンプルを花嫁に送り、一週間ほど貸し出して選んでもらうサービスもあるようです。指輪についても同様に、自宅に届けて最終的に購入を決定してもらうサービスがあります。
ただし、ブライダル産業側からすると、オンラインである程度、好みのデザインなどを絞り込んでくれれば、展示するサンプルの数を激減することができますし、婚約者カップルの来訪の件数が減れば、接客に当たっていた要員に別の仕事を頼むことが可能になります。
新婦さんと、そのお母さんがそれぞれドレスなどを新しくあつらえるケースもあるようで、ファッション・コーディネーターを介在させる業者もいるそうです。スタイリストとオンライン・ブライダル・サービスのコラボレーションとのこと。
利用者、つまり新郎新婦の側も、以前に比べるとソーシャルメディアなどを通じて情報を収集するようになっており、スマートフォンのアプリなども使いながら、ドレスや花、アクセサリーや靴を選ぶようになってきているとのことです。メイクアップや髪型、エステなど、従来のように雑誌や行きつけの美容院からの直接情報だけでなく、SNSを活用して幅広い情報源、それこそ世界中から情報を集めて、自分の好みを発見して具体化する新郎新婦がどんどん増えているということです。
両親や友達を巻き込んだ事前の「会議」にもZoomなどが活用されるようになってきています。パンデミックの影響で、Web会議のゲストになって参加するだけでなく、自分がホストになっていろいろな人をオンライン会議に招待することにも習熟した人が急増したことでしょう。
関連するオンライン販売には、花がありますが、花は特に季節により温度の変化に対応したり、水分にも気を配る必要があり、例えば長く茎を残して送って、現地で短く剪定するといった対処も必要なようです。
バーチャルであってもリアルであっても、記念の写真やビデオの撮影、加工や編集を専門家に発注することがあります。結婚には新居や旅行もつきものですから、そういった業界とのコラボレーションも、ネットを使えばシームレスなサービスに編み上げることも可能となります。
<参考情報>