デジタルサイネージ
デジタルサイネージは、電子版のポスターではありません。もちろん、印刷したポスターの掲示代わりに導入されているものもありますが、広告の用途でも告知の用途でも、デジタルサイネージはその優れた表現力で活躍の場を広げています。
導入が増えると、メーカーが競争をしますし、部品の需要が増えることで単価が下がり、サイネージそのものの価格も安くなります。
屋外に設置されることも増えているため、頑丈で高温や低温、風雨に耐えることはもちろんですが、直射日光を浴びているようなときでも視認性のよい画面や、大型の画面が増えてきています。人の目は動くものを追いかけますから静止画よりも動画が有利です。
画面も有機EL、電子ペーパーなど材質も多様化していますし、特定の用途には強みを発揮するものが続々と商品化されています。
コンテンツの自動作成も徐々に進んでいます。工場のオートメーションや、最近ではExcelファイルの自動生成などが歓迎されるのは、1つにはそれに係る人件費を削減できるからでしょう。ロボットは産業用であれ、コンピュータ上のものであれ、疲れを知らずに作業を続けます。特に単調で簡単な作業を人間が続けると、苦痛だったり、疲労して間違えたりすることがありますが、ロボットなら確実に同じような作業を倦むことなく続けることが可能です。
さらに、集中力の低下や、慣れによるうっかりというのは人間であれば誰しも経験するところですが、多少融通が利かないところはあるものの、ロボットにはうっかりの危険がありません。
最初はスケジュール設定によって、コンテンツの切り替えなどを自動化するところから始まって、デジタルマーケティング用に開発された各種の自動化ツールがデジタルサイネージにも活用されていくことになるでしょう。
デジタルサイネージにも双方向性を持つものが増えるようです。プライバシー侵害を心配する人の多い機能ですが、カメラがサイネージの前に立った人を捉えて、人種や性別、年齢などを推測し、その人に合わせた広告コンテンツを表示しようという試みは古くからあります。
今ならば、国によっては単に属性を推測するたけでなく、顔認証によりずばり、その人が誰なのかを特定することも不可能ではありません。そこの過去の購買履歴や、ネット上ので検索行動などのデータが付け加えられて分析され、自分にぴったりの広告が街角で表示されたりすれば、たいていの人にとっては余り愉快な経験ではないかも知れません。特段、恥ずかしく感じる必要のないものであっても、例えば、冷蔵庫の中の生卵が古くなっているからという理由で、卵の購買を促す広告が近くにいるほかの人々にも見える形で提示されたら当惑するに違いありません。
それでも、オムニチャネルでの成果を上げようとする売り手側は、スマートフォンやPCでの顧客との接点での振る舞いと、リアルな店舗などに設置されるサイネージとの間でシームレスに統合したいと考えるはずです。そのため、セキュリティやプライバシーへの配慮はますます重要になるでしょう。
もう一つの流れとして、インタラクティブ性を実現するためにタッチパネル式のデジタルサイネージが増えてきていましたが、COVID-19の影響で、タッチレスで画面を操作する技術に注目が集まっています。エレベータのボタンや電車のつり革、銀行のATMなどのように不特定多数の人の指が触れたものを避ける気持ちはしばらく収まらないのではないでしょうか。
デジタルサイネージそのものが、公衆衛生について人々に公道変容を促すようなコンテンツを提示する機会も増えています。その場合、情報発信するのは自治体や医療機関ですが、病院内だけでなく、空港や駅の構内、店舗の入り口などで手の消毒やマスク着用、検温などを促したり、ソーシャルディスタンスの確保を促したりすることは、以前から広く行われています。デジタルの利点は、多言語の表示も比較的容易なことで、今後、各国で外国人旅行者が増えてきた場合であっても、情報提供で活躍する場面はたくさんありそうです。
<参考資料>