中国の高齢者を念頭に置いたデジタル化政策
デジタル化の発展が高齢者を置き去りにしているということは各国共通の課題のようです。そんな中、中国政府はテクノロジーギャップへの対応をサービス提供事業者側に求めるイニシアティブをスタートさせました。
11月下旬に中国の内閣にあたる国務院が公表した資料は、高齢者のさまざまな基本的ニーズがデジタル化によって阻害されないよう、2つのアプローチを採るように指示しています。
- 非デジタルのサービスを維持することで高齢者を置き去りにしないこと
- デジタル化に当たっては高齢者向きのデバイスや技術の開発を同時に進めること
の2点です。
公共交通機関、医療、エンターテイメント、小売、その他、さまざまな分野で急速な技術革新が進んでいます。しかし、インターネットやスマートフォンを活用することができない利用者は、その恩恵を享受することができません。
例えば、病院の予約、医療費の支払い、処方箋、医薬品の購買、カルテなどがすべてデジタル化されて、PCやスマートフォンですべてが完結すれば、利便性が向上することは間違いありませんが、そうしたテクノロジーを導入し、予約その他をこのシステムに限定してしまうと、高齢者が診察を受けることができなくなってしまいます。
従来の窓口や電話などでの対応を維持するとともに、たとえば一日のうち、オンラインでの予約の枠とは別に、それ以外の予約の枠を一定数確保すれば、スマホを持たない高齢者を受け入れることが可能になります。
つまり、インターネット、ビッグデータ、人工知能、モバイルなどの情報技術の急速な発展と、高齢化が同時進行している中国では、医療、移動、買い物などの日常生活で、単にインテリジェントなサービスを享受できないだけでなく、基本的なサービスへのアクセスまでも制限されてしまう恐れが、特に高齢者の場合には顕著なのです。
しかし、既存の方法を残すと同時に、新規開発する技術でも、高齢者への支援を念頭に作るならば、高齢者ともその成果を共有することができるという考えのようです。
そのためには、紙のチケットなどが残り、現金での支払いが残り、館内呼び出し放送が残り、領収書も、飲食店では壁や紙のメニューが残ってしまいますが、そうした既存の手段は維持しつつ、裏側をインテリジェントにしていく方策を見つけよというのがガイドラインの趣旨のようです。
特に、自然災害や急病、事故などの場合を考えれば、スマホに限定した仕組みの危うさが分かります。
それでも、電話でタクシーの配車を依頼した人に対しても、裏の配車システムにはAIを導入して、迅速かつ正確に、そして安価にタクシーを向かわせることができれば、高齢者にも技術の恩恵が行きわたることになります。
ガイドラインでは、2021年末までに、移動、医療、小売り、娯楽、高齢者の仕事などの問題に焦点を当てて解決を図ること、2022年末までに高齢者向けのインテリジェントサービスへのアクセスを大幅に向上させてメリットを高齢者が享受できるようにすることを求めています。
長期的には、デジタル技術を使いこなすことが難しい人の比率が下がり、誰もが先端技術の恩恵を受けることができる時代が来るはずです。
<参考資料>