クルーズ船のデジタル
GPSや、漁船の魚群探知機や大型船の自動操舵装置(オートパイロット)など、船には昔からハイテク機器が搭載されてきました。
大型の豪華客船は長い間、大洋上をたくさんの乗客を乗せて航海するので、いわば発電所や上下水道設備ごと浮かぶ町のようなもの。陸上のホテルやアミューズメントパーク、レストランで、スマートフォンやIoTデバイスの利用が進んでいるのですから、船の上であっても例外ということにはなりません。
問題は、インターネットへの接続です。
町には光ファイバーが張り巡らされ、LTEや5Gの基地局、Wi-Fiのアクセスポイントから先には高速な地上ネットワークがあります。船の場合、港や沿岸を航行中には地上からの電波を受信することが可能ですが、洋上では高額な衛星通信に頼らざるを得ません。
船の上の機器と機器の間は、有線でつなぐこともできますし、IoTデバイスをたくさん使うのであれば、LPWA、つまり低速低消費電流で広域のカバレッジが可能な無線通信の設備を用意することもあるようです。
客船であればホテルと同様、部屋の鍵や、キャビンなど限定エリアへの入場にキーカードが使われていましたが、ブレスレットやネックレス型のウェアラブル機器を採用するクルーズ船も登場しています。これをかざせば、部屋の鍵が開くだけでなく、ルームチャージの要領で、船上での買い物などでの支払いも可能になります。VIPを特別扱いするならば、VIP用のウェアラブル機器をしゃれたデザインで提供すればいいのです。
そのほか、顔認証などを活用すれば、長い行列を作らずにスムーズに入場してもらえたり、乗客の属性や行動履歴に基づいたオススメを提示することもできます。最近であれば、同時にマスクの有無や検温も可能で、感染症予防にも活用できます。
また、今の乗客はほぼ確実にスマートフォンを持参しているものと言えそうです。ということは、スマホにアプリをダウンロードしてもらえば、さまざまな機能をスマートフォンから利用していただくことが可能になります。
ルームサービスやベッドメイキングなどの依頼や、さまざまな問い合わせが可能になります。クルーズ船側から見れば、膨大な情報を一人一人に口頭で説明したり、分厚い冊子を渡して読んでもらう必要がなくなります。さまざまな施設やイベントの利用方法や参加方法、スケジュールや条件などを乗客が自分で調べてくれたら乗務員はほかのことに時間を使って、サービスの質を向上することができるでしょう。
乗客はショーを見ながら、自分の部屋の室温を確認して、エアコンを遠隔操作することもできるようになります。
バーカウンターに並ばずともカクテルを注文して、自分の居場所を伝えることもできます。
また、船内で迷っても、自分がどこにいるのかをスマホの画面で確認できるでしょう。
また、SiriやAlexaなど音声認識の技術が新たな地平を切り開いてくれます。7か国語に対応できる接客担当の乗務員を雇うとなると、人件費がかさみむでしょう。しかし、世界中で売られているスマートフォンは、各国の言語に対応していますから、質問も回答も母国語か、英語、スペイン語、中国語などの主要な言語で行うことが可能になります。
<参考情報>