建設業界のDX
建築業界は比較的「紙」の利用が多く残っている業界のようです。デジタル技術の活用が進まないと、建築事務所や建築会社のオフィスと建設現場の作業員との間には時間的なズレと認識の断絶が生じます。
建造物は、高層ビルやスタジアムから戸建ての一軒家や集合住宅に至るまで、基礎、壁、柱、屋根、天井、ドア、窓などさまざまな要素で構成されていて、建築工事のそれぞれの段階で必要になる素材も機材も、作業者のスキルも大きく異なります。
したがって、関連する組織や企業も多岐に渡ることになりますし、それが前の建物を取り壊して撤去するフェーズ、整地して基礎工事を行うフェーズ、上水道・下水道の配管やガス、電気、通信回線の管路の敷設のフェーズなどから始まって、組み立てや塗装などなど関連する会社も要員もフェーズによってどんどん変化します。
こうした業務にはコラボレーションのツールやプロジェクト管理のツールが最適ですが、日本でも欧米でも関与する企業は大手ゼネコンから発注を受けた中小零細企業を含む下請けや孫請けがたくさんの階層を作っていてます。先端的なクラウドのコラボレーションツールを導入したとしても、当然のことながら関与する全員がその恩恵を受けることは難しそうです。だからと言って旧来の管理方法にこだわっていては、激しい競争に勝ち抜くことはできないはずです。
コラボレーションやプロジェクト管理だけでなく、デジタルはいろいろな側面で建築業界の未来に影響を与えています。
工法や重機の操縦方法をトレーニングする場面では、VRやARの活用が始まっています。
建築にはBIM(ビル情報モデリング)の活用が、計画、設計、施工の効率化を支援してくれます。IoTの統合やAIの活用も始まっているようです。
建設工事が終わって入居が始まった後でも、BACnetなどの規約に準拠したインテリジェントビル用のネットワークを使った空調、照明、エレベーターなどの遠隔管理や制御、保守が行われます。
特に電力消費の最適化は地球環境の保護という視点からも重要視されています。
ドローンやウェアラブル、建設用の各種カメラ、機械学習による映像分析なども建設や保守の業務に大きな変化をもたらしています。測量士が出向いて目視するのにかかる時間は、ドローンに搭載されたカメラからの映像が短くしてくれます。
モバイル機器が普及しているので、業務連絡の頻度と密度はひと昔前に比べると格段に向上しています。
VRや360度カメラ、タイムラプスなどの映像はセキュリティ監視だけでなく、強力なマーケティングツールにもなります。建築中のオフィスや住居を、事前に内覧することが可能な時代が到来しており、顧客(法人、個人)側のデジタル利用が拡大している中、提供側が対応の遅れは商機を逃すことにつながりかねません。
<参考資料>