賃貸住宅業界のDX
住宅情報をネット、特にスマートフォンで収集するのは当たり前になってきました。今でも不動産屋さんを訪れて、希望を口頭で伝えて、さまざまな候補を提示してもらい、物件を見て回るというスタイルは残っているものの、貸す側がネットで情報を公開しておいて、借りる側がそれを事前に調べることはもはや当然のことになっています。
もちろん初めての引っ越しで間取り図や周辺の地図、数枚の写真だけでは想像するにも限度があります。やはり、実地に見てみないと決めることはできません。
かと言って、通勤や通学の便のほか、間取り、駅からの距離、商店街など買い物の便利さ、駐車場やオートロックの有無、子育て世代であれば幼稚園や学校までの距離、ペットを飼うことの可否、インターネットアクセスの有無などなどなど、考慮すべき事項は多岐に渡りますね。ここはやはり、デジタルの出番でしょう。Google Mapやストリートビュー、Google Earthなどが、引っ越していく予定のある場所について膨大な情報を与えてくれますし、住宅供給側も競って情報提供に努めてくれていますから、さまざまな条件で検索することが可能になっています。
もちろん、このことは供給側にとってもメリットがたくさんあります。もし、住宅選びにいくらでも時間をかけていいと考えているお客さんが来て、候補物件を片っ端から見たいと言ったらどうでしょう。その人を自動車に乗せて、物件の鍵を全部持って出かけ、建物の外を見せ、中を見せて、トイレや収納の説明をし、お客様が窓からの景色を確認したり、ごみ捨てや水回りなどについて、あるいは、最寄りの保育園や歯医者さんについて素朴な質問をどんどんしてきたとしたら。しかも、一軒ではなく、何軒も何軒も回った挙句に決めかねて、次の日にもほかの物件を巡ることになったとしたら、対応だけで大変な労力ですし、しかも必ずしもその努力が報いられるとは限りません。
情報をなるべくたくさん事前に提示しておくことがとても大切になります。さらに、顧客側が持つさまざまな要望にどの物件が答えているかを上手に提示する工夫も大事です。
実際に物件を見るために案内する業務以外にも、電話などでたくさんの質問に答えたり、逆に部屋を借りようとする人から必要な情報を引き出して最終的な契約書を作るに当たっても、オンラインでやりとりする方が、ずっと手軽な上に、保存も簡単になり、つまりは検索も簡単になります。コールセンター業務で漢字(英語ならスペル)を確認しながらオペレーターが記録を残すとなるとコスト削減は難しくなります。
人気の物件であれば、見たいという人も多く、顧客側は順番待ちを強いられます。身に行ける時間に制約があると、仕事や学校を休む必要があります。すぐれたオンライン・エクスペリエンスを提供できれば、顧客も業者もハッピーになるに違いありません。
その意味で、顧客はYahoo!やGoogle、AmazonやFacebookなどが提供している分かりやすいエクスペリエンスに慣れていますから、提供側も気を抜くことができません。
マンションの中には、ARで間取りや窓からの風景を提示しているところもあれば、家具メーカもそういったアプリの提供を行っていますが、家具の配置をARで示す試みに取り組んでいるところもあります。
業務のデジタル化が進むと単に効率化が進むだけでなく、リモートワークも容易になり、働き方改革にもつながります。物件の情報、お客様の情報を紙で管理していたら、自宅で仕事をするのはとても難しいですし、例えば物件の案内中に携帯に別のお客様から電話が入っても、記憶やメモに頼って応対せざるを得なくなってしまいます。モバイルでCRMや社内のDBにアクセスできれば、仕事ができます。
優れたCRMは、例えば大学生の卒業シーズンにすでに1年生のときに獲得した顧客にアプローチするなど、クロスセル、アップセルの機会を増やします。
<参考情報>