ホテル・テクノロジー
観光旅行やビジネス旅行客が以前のように多くなっても、時計の針は昔には戻らないでしょう。新型コロナ感染症の世界的な広がりは、コロナ以前と以後を明確に区分していて、ホテル業界も例外ではありません。宿泊客側がホテルに期待することが大きくシフトしたためです。
宿泊客が求める快適さの中で非接触が大きな比重を持っています。フロントで係の人に話しかけ、予約を確認してもらって宿泊カードに手書きで記入し、鍵やら食事クーポンを手渡しされ、エレベータフロアでエレベータのボタンを押して自分の部屋のある階まで上がって、鍵穴に金属製の旧来型の鍵を挿したり、ICカードなどを読み込ませるなりして、ドアノブをひねって扉を開き、鍵を挿して照明などの電源を入れるという一連のチェックイン動作には数多くの接触があります。チェックアウトも同様です。
宿泊の体験を変革しつつあるのはデジタル技術です。自宅やクルマ、職場のキャビネットなど物理的な(金属やプラスティックの)鍵をなくした経験を持つ人は多いはず。鍵が最終的に見つからければ作り直すコストがかかります。
アプリにスマートキーをインストールすることでこの問題は解消されます。
アプリであればレストランやオプショナルツアーの予約、その他の追加料金が必要なオプションの注文と決済がスタッフと触れ合うことなく実行できます。
ホテル側からすれば、こうした宿泊客の行動を労せずして記録し、後に分析することが可能になるわけです。
顔認識や音声制御、IoTによってホテルの部屋や設備そのものが賢くなっています。音声認識技術が発展したので、外国旅行中に分厚い辞書を持ち歩く必要がないばかりか、地元の人にもAIにも気軽に母国語で質問を投げかけて、母国語に翻訳された返事を聞くことができます。
なじみのない場所で観光して回ったり、長いビジネス会議で疲れて部屋にもどってから、自分で部屋の空調を設定し、湯船に湯を張って、テレビのリモコンを探してテレビをつけるのは疲れます。これらを音声で制御できれば、ベッドに腰かけたままリラックスしてお風呂を沸かし、好みのテレビ番組や映画にたどり着くことができます。
照明やシャワー、テレビだけでなく、窓やカーテンの開閉も音声で制御できる時代です。
ホテル業務自体もデジタル化が進んでいます。ホテル側に適切なCRMがなければ、例えば披露宴などで高額な料金を支払ったお客様に対して一度目、二度目の結婚記念日を前にお祝いのメッセージを送ったり、5周年、10周年をお祝いする豪華なディナーを提案することができません。そうしたシステムやSNSをきちんと整備して、お客様を何回でも呼び込もうとしているホテルとそうでないホテルの差は開く一方ではないでしょうか。
チャットボットは予約前のお客様に情報を提供するばかりではなく、宿泊客に対しても便利な情報提供手段です。ゲストがフロントに電話して、近くのお勧めの観光施設やグルメ情報を聞きたがる場合に備えるとなると、フロント業務に就くスタッフに対してFAQをわたし、訓練する必要があります。チャットボットにもトレーニングは必要ですが、1回のトレーニングで何回でも疲れ知らずで答えてくれます。
清掃や配膳、荷物の運搬にロボットが活用されるケースも増えています。ルームサービスを持ってくるのは、エレベータにも自律的に乗り込むことが可能な賢いロボットになりつつあるのです。すでにアメリカでは導入され始めているようなのですが、チップを受け取るのかどうかは定かではありません。
<参考情報>