葬祭業のDX
全国各地で代々同じ地域で生活している人々にとって冠婚葬祭は地元に密着した行事ですから、結婚式やお葬式を行うに当たって、何か新しいことをやろうということにならない限り、過去から連綿と続いた方法がありますので、戸惑うことはあまりないかも知れません。
大都市に移り住んだ人も、ご両親は郷里におられたりするので、仮にどちらかがお亡くなりになったとしても郷里の伝統的な方法で葬儀や法事を執り行うことができるでしょう。けれども今では大都市でも地方でも先祖代々の方法は少なくなってしまい、例えば都会で育った人のご両親が都会で亡くなった場合、遺族の誰にも都会の地元でお葬式を行った経験がない場合が圧倒的に多くなってきています。
遺族は何らかの方法で葬儀社を見つけて手配しなければなりません。
こうした事情は引っ越しの多いアメリカでも同様のようです。葬祭業の経営の安定にはデジタル・マーケティングが不可欠です。デジタルを活用しない場合、大きな機会を逃していることになります。
すでに、葬儀社を選ぶ側はほぼ確実にネット利用者で、しかも多くはスマホ利用者です。PC向け、モバイル向けのウェブサイトや、ソーシャルネットワークのアカウントた動画サイトなどのチャネルを持っていない場合、多くの人々にアクセスするのは無理とは言えないものの、お金と時間がたいへん多くかかります。
リスティング広告もPPC広告も人工統計学的な特性や地理的条件、過去のネットでの行動履歴により分類されたセグメントに向けて効率的に広告を提示することが可能です。ターゲティングが不十分では無駄な広告費を負担することになってしまいます。また、ネットの広告は必ず効果を測定しながらチューニングする必要があります。
ソーシャルメディアも広告媒体として有望です。さらにここではユーザーとの対話が生まれる場でもあります。
ウェブサイトそのものについては、ブログやビデオ、電子ブックなど、デジタルならではのリソースを用意して、ユーザーを教育することが重要のようです。予備知識が不十分なサイト訪問者にとって、信頼できる情報が得られるサイトは次のアクションを起こしやすいサイトです。戸惑い困っているユーザーに、プロフェッショナルでありながら親しみの持てるサイトのデザインとコンテンツが必要となります。
サイトを向上させるヒントは、実際に利用してくださった人々から拾い集めるリアルな声の中にたくさんあるそうです。ロケーション、透明な価格情報、価格そのもの(低価格など)、宗派の自由度、支払い手段や分割払いなどのオプション、その他の付随するサービスなど、選択の決め手になったことをヒアリングするのだそうです。また、利用者の声を掲載することも信頼を勝ち取るために有効です。よくある質問(FAQ)も大事なコンテンツのようです。
当然のことですが、葬祭業は地域の文化について深く理解していなければなりません。地域によって習慣や人々の考え方が違うことを十分意識して、適切なコンテンツ提供とコミュニケーションを続けることが必要です。
このように、葬祭業といえどもデジタル・マーケティングの基本的な要素やベストプラクティスは他の業界と共通する部分は多いと言えそうです。
ちなみに電話はむかし、電話交換手というオペレーターがつないでいました。古い映画などで壁にかけた電話機から受話器を取り上げて、レバーを回し、送話口に向かって誰それにつないでくれとか、何番につないでくれと伝えているシーンをご覧になった方もおられると思います。昔、アメリカのある町に葬儀社が2つあって、片方だけ繁盛してもう片方になかなか依頼が来ないということがあったとか。よくよく調べてみると、その町の電話交換手さんが繁盛した方の葬儀社の関係者(妻?)で、葬儀の依頼の電話が入ると必ず自分の家の方につないでいたためだと判明したんだそうです。それに憤慨したもう片方の葬儀屋さんが、電話機からダイヤル信号を送ると自動で接続する自動交換機を発明したという逸話があります。今でいうと、ジャンル別にリンクを掲載していた昔のYahoo!のようなポータルサイトが、自社に関係の深いウェブサイトへのリンクばかり並べていたところに、検索キーワードを入力したら最も関連性の高いサイトから順番に表示するロボット検索型のGoogleのようなサイトが出てきたということに似ているかも。
<参考情報>