服飾産業

アパレル産業では多くの場合、低賃金の国々での過酷な肉体労働による大量生産、大量消費、そして場合によっては大量の廃棄が問題視されます。
けれども公正な貿易や賃金を正義とする若者の台頭や、マスメディア以外の情報源を駆使する人々に満足してもらうためには、テクノロジーを活用して、業界自体が進化していく必要があるようです。
ソーシャルメディアは、以前よりも確実に情報の発信から消費までの時間と空間を短くしました。モデルがランウェイを歩く場面に立ち会うことができる人は限られていて、そこで披露された情報が雑誌の記事となって消費者である読者や、各国のファッション関係者に届くまでの時間は数週間から数秒にまで短縮されてきており、今では世界のどこにいても最新のトレンドにアクセスすることが可能です。
けれども同時に皆と同じであることを望まない若い人々は自分たちのニーズや好みに合わせたものを求めています。こうした中でブランドが大量のアパレルを何か月前から準備して生産し、流通させることの意味は薄れてきています。

ランウェイ


顧客体験の向上やカスタマイズされた提案が必要なファッションブランドのWebサイトに何らかの形でAIが活用されていない例を見つけることが難しくなってきています。
顧客のショッピング経験を向上させると同時にデータを分析して売上を伸ばし、トレンドを予測して在庫量をコントロールするためにもAIは必須になりつつあります。
無駄を生まないことは、価格に跳ね返り、製造コストの過度な抑制から解放されて、生産国にも消費国にも恩恵があります。データの分析と共有はクラウドのおかげで世界中で同時に可能になっています。

デジタル技術ではありませんが、合成皮革や人工の毛皮を実験室で作り出す技術も動物に危害を加えたくないという人々の気持ちに応える形で発展しているそうです。

また、被服自体がハイテク化する動きもあります。最初のスポーツやフィットネス、ヘルスケアなどの分野で顕著でしたが、センサーと通信機能を備えたインナーが体調や健康状態、アスリートのパフォーマンスを「見える化」したり、場合によっては公共交通機関の運転手さんの眠気を検知したりする技術が開発されています。ブレスレット型やペンダント、リングなどアクセサリーの形状をしていた「ウェアラブル」機器が、服飾の形の「ウェアラブル」に進化しつつあるようです。ヨガの姿勢を検出して、振動によってポーズを修正するように促すヨガ用パンツまで開発されているようです。
心拍数や体温をトラッキングできるインナーはもちろん、靴下に歩数やカロリーをカウントさせる製品も生まれています。

吊るし


XR技術は試着の概念を変えつつあります。3Dフィッティングを画面上で行うことは珍しいことではなくなりました。試着できず、生地の肌触りも確認できないから、ネットで服などは買えないと思っている人はほとんどいないでしょう。また、パンツの裾上げなど、実店舗の方が都合のよかったこともどんどん改善されて、自分に合った、また好みの裾丈の製品を注文することができるようになりました。

メガネなども、検眼とフレームやレンズ選びが分離されて、実店舗では検眼結果を数値化してもらったり、フレームの種類をいくつか試したりして、結局はネットでいちばん好みに合うものを選んで組み合わせ、ネットで注文することが簡単になりました。



<参考情報>