製造業のカスタマー・エクスペリエンス

製造業で、特にB2B、つまり法人向けに製品の供給を行っている場合、Webサイトは必ずしも重視されていないのではないでしょうか。

 

デジタル・エクスペリエンス・プラットフォームを推進するAcquiaはORM社と共同でイギリスの製造業者のマーケティングおよびITの責任者を対象に調査を行い、結果を公表しました。

それによれば、製造業であっても顧客との関係の構築と強化に「デジタル」は有効であり、重要だと考えられており、Webサイト開発とCRMが新しい顧客中心のアプローチの中心だということが分かったようです。

 

メーカーの法人営業部門の多くは、いわゆる飛び込み営業で新規顧客を獲得したり、展示会などに出品して新規リードを集めたりして、カタログやパンフレットを渡し、場合によってはプレゼンテーション資料を投影するなどして、商品説明を実施しています。いきなり採用となることなどは滅多になくて、サンプルを渡したり、試験的に導入してもらったりして、評価していただき、結果が良好であれば見積書を提示して、価格交渉の末に受注。その後、納品して検収といった流れが一般的でしょう。

営業は足で稼ぐというのが古くからの通説ですから、営業担当者は担当エリアを動き回り、新しい取引先を探し続けます。また、営業所を設置できない地方では販売代理店を見つけて、その代理店に製品の説明を代行してもらい、売れた場合には販売手数料を支払います。

 

コンシューマー向けの場合には、Webでの販売方法が非常に成熟しています。今やWebサイトその他での行動履歴に基づいて、適切な時期に適切なタイミングで適切な情報を提供し、関心を惹き、購買まで導くためにさまざまなデータが分析され、最適化が図られています。

製造業のWebサイトでは従来、来訪者を十把ひとからげに扱っていました。誰がどういう意図でサイトに来ても、製品説明、会社説明などと並んで問い合わせフォームなどが用意されているだけの静的なサイトが大多数でした。徐々に動画による説明やオンラインのデモなども用意されるようになってきましたが、通常は誰が見ても同じ内容が同じ場所に表示されるのが製造業のWebサイトです。

 

しかし、製造業者の売り込み相手も、消費者としてはECサイトで買い物をしたり、タクシーをアプリで呼び出したりしており、購買における情報収集や、実際の購買における利便性に気づいています。

営業担当者が顧客を回って、同じ製品について同じ説明を繰り返す労力に比べれば、Webサイトで基本的な情報をうまく伝えて、営業担当者は複雑な問い合わせに答えたり、潜在顧客との関係の強化に時間を使うことができるようになります。

ツールをうまく使えば、Webサイトを訪れた潜在顧客の情報がデータベースに自動的に格納されて、マーケティング担当者が集めた顧客情報を効率的に営業担当者に渡すことが可能になります。

 

アフターサポートもある程度まではWebを介して提供できるので、即時性も高まりますし、代理店を経由しない、直接の関係を顧客との間に築くことが可能となります。

 

潜在顧客が自社のWebサイトで何に興味を持っていたかが事前に分かるので、営業担当者が電話を受けたり、営業担当者の方から電話する場合にも、相手の関心事を知るための質問などはスキップして、単刀直入に話を進めることができるようになります。

 

今回の調査では、調査対象の製造業者の3分の2が、こうしたデジタルの重要性にすでに気づいていて、具体的な動きを始めようとしていることが明らかになりました。オムニチャネルの重要性にも目が向けられているようです。

 

 

 

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