ヘルスケア業界のデジタル対応 ~ パーソナライゼーションの必要性

医療法により病院などの医療機関は広告に対して規制を受けています。多くの病院やクリニックのWebサイトは主として診療時間やアクセス方法、主な診療科や院長名の紹介程度で、予約のための電話番号が記載されているといったものが一般的でした。

 

しかし、スマートフォンの普及により、かつて情報提供はインターネットを経由してパソコンへ、予約などのやり取りは電話を使って肉声でという区分は曖昧になってきました。今では多くの情報がPCやスマートフォンに対して届けられ、健康診断などの予約が可能なWebサイトも増えてきています。

 

しかし、ほとんどサイトは来訪者に適切なナビゲーションを提供していませんし、来訪者をきちんと個々の顧客として分析したり、分析に応じたエクスペリエンスの提供までは行っていません。

例えば、病院やクリニックのサイトを訪れる人の中には、自宅や職場の近くで特定の診療科を探している初診患者さんもいますし、かかりつけ医が何曜日にいるか確認する患者さんもいれば、入院患者を見舞おうとしている人、禁煙外来の有無や人工透析が可能かなど特別な調べものをしている人、製薬会社や医療機器メーカーの人などさまざまな人がいます。それぞれが違った目的で情報を探していたり、予約などの目的で病院とコンタクトしようと思っていたりします。

ただ、多くのサイトはペルソナの設定が不十分で、カスタマージャーニーを考慮せず、最大公約数的に冗漫な情報を羅列していたり、特定の訪問客に対しては不十分な情報しか提供できていない場合がほとんどでした。

 

Acquia社の日本を含むアジア太平洋地域の責任者であるChris Gibbs氏は、デジタル体験を考慮することで医療機関にも成長戦略が描けると述べています。彼によれば、顧客体験の立場から医療サービス提供者は、ウェブサイトの訪問者を以下のような視点で分析し、理解する必要があるそうです。

 

訪問者の意図を理解する

検索結果やソーシャルメディアでの評判を読んでから訪れた人もいれば、学生の長い休みや、花粉症や日本でいうお盆や正月など季節的な要因を背景に訪れる人もおり、こうした経路の分析に時期や時間の要素を重ねると訪問の背景を推測することができます。

 

満足度を測る

訪問者が早々に離脱したり、サイト内で迷子になっている場合、オンライン・エクスペリエンスの設計が不十分である可能性が高くなります。あるいは、予約に関する情報提供が上手くいっていないケースもあります。

一度の外来で解決せず、通院が複数回に渡る場合に、顧客との接点をオンラインにしておけば、継続的な関係を築くことができますし、さまざまな段階で満足度を測る方法を見つけて、満足のいく体験価値を提供すれば、医療機関であってもブランドとして、患者やその家族をブランドの伝道者にすることも可能です。そのためにはオンラインのレビューなどにも注目する必要が出てきます。病院の評判には、医師や設備だけでなく、受付や看護師に対する辛口のコメントが多いものですから、これらをフィードバックとして適切に活用すれば、医療サービスそのものの価値も高まります。

 

従業員満足度を高める

スタッフが院内だけでなく、オンラインで患者や家族との接点を持ってくると、スタッフのモチベーション向上にもつながります。また、スタッフからのフィードバックを集めることもデジタルのプラットフォームを活用して行うことが可能になります。

 

患者や家族に多様な選択肢が見えてしまうデジタル時代には、適切なデジタル体験を設計して提供しない限り、惹きつけておくことができません。反対によい体験を与えて、エンゲージメントを高めるができれば、患者や家族とつながり続けるだけでなく、バイラルによって新たな来訪者を惹きつけることもできます。

 

医療機関と言えども、未来のためには的確なデジタル戦略を立てて実践していく必要があるということでしょう。

 

 

 

<参考情報>