ヘルスケアと音声認識

医療や健康に関わる領域での音声技術の役割についてAcquiaのマーケティング責任者、Lynne Capozzi氏が解説しています。

 

 

消費者向けの商品やサービスを提供するデジタルの世界では、エンゲージメントが重要視されます。エンゲージ・リングは婚約指輪という意味ですから、エンゲージには婚約するという意味もありますが、マーケティング用語におけるエンゲージメントは、消費者がブランドに対して抱いている愛着とか、関与度、魅了されている度合いを意味します。例えば、フェイスブックでは、投稿や広告を観た人の数は「リーチ」で数え、投稿や広告を読んで何らかのアクション(シェアや、いいねなど)をした人は「エンゲージメント」と数えています。それだけ深く関与している、愛着を持ったということを表しているのでしょう。

 

ヘルスケア産業における消費者、つまり患者にとってもエンゲージメントを強化することが求められています。例えば、処方された薬を正しく飲み続けるとか、食事をコントロールするとかいったことには、患者本人の積極的な関与が不可欠だからです。

そうした中で、ここ数年、着実に人々の生活に浸透し始めてきた音声技術の果たす役割が大きいというのです。

 

消費行動においては、消費者はスピードが速く、シームレスで、パーソナライズされた便利な体験を求めます。情報へのアクセスが遅かったり、小売りの現場とネットやテレビでの体験がバラバラだったり、自分と無関係だったり、不便だったら、とても購買には結び付きません。医療や健康についても同様で、迅速で、首尾一貫していて、患者の個々に向けて組み上げられた便利な方法で治療法を提供する必要があります。つまり、Webマーケティングとヘルスケアには共通点が多いということでしょう。

 

そんな中でも特に音声技術に注目する理由は昨今、各社がこぞってスマート・スピーカー(あるいはAIスピーカー)の販売を開始したこともありますが、やはり、パソコンやスマートフォンを使わない人でも、あるいは、使うけれども起動したり、アプリケーションを選んだり、設定を行うことが面倒だとか厄介だとか感じている人にとって、AIスピーカーと音声で会話しながら、検索したり、情報を得たり、機器を操作する方が、指先でいろいろな動きをしながら目で画面の遷移を追いかけるよりもずっと自然で簡単だからでしょう。

 

スマート・スピーカーをヘルスケアに持ち込むと、以下のような場面で患者に役立ちます。

 

  • 情報へのアクセス:医療関係の情報は玉石混交で、民間療法や代替医療の情報などもネットには膨大に出回っていますが、音声を使って、信頼できる情報に素早くアクセスできれば、患者にとっては大変便利です。
  • 外来予約:電話もかけず、Webサイトのページも開かずに、音声だけで予約が取れて、前日や当日にも音声でリマインドしてくれれば、病院やクリニックの予約は簡単になります。
  • 服薬支援:生活習慣病その他で毎日服薬を続けなければならない人、特に、服薬を始めたばかりの人にとっては、忘れずに飲み続けることは意外に難しいため、スマホのお薬関係のアプリには必ず、服薬を促すリマインド機能がついています。けれども家にいて、スマホが手元になければ気づくことができません。スピーカーなら、画面を見ていなくても声で服薬を促してくれます。

 

AcquiaのプラットフォームはDrupalを活用していますが、Drupalの大きな特徴の1つが、デカップルド・アーキテクチャーです。つまり、Drupalは単なるCMS(コンテンツ管理システム)ではなく、Drupalのデータベースに格納した情報は、Webページだけでなく、APIを介してその他のチャネルに容易に流すことができるのです。例えば、データベースに格納した映画館の上映スケジュールの情報を、Webページだけでなくスマホのアプリや劇場内外のデジタルサイネージなどに、1つのソースから複数のチャネルで活用できます。これはスマート・スピーカーでも同じで、AcquiaがDrupal 8リリース直後に作ったデモ動画では、消費者が居間でAmazonのスマート・スピーカーを使ってDrupalと「会話」しながら買い物をする様子が描かれていました。最近も料理をする様子の動画が公開されています。

 

つまり、Drupalでヘルスケア関係のサービスを構築すれば、ユーザとのインタフェースはWebサイトやスマホ・アプリ、音声、デジタルサイネージのタッチスクリーンなど、媒体を選ばないということです。

 

このことは、消費者や患者の利便性を高めるだけでなく、サービス提供側の労力を大幅に削減することにもつながり、結果としてその余力で、消費者や患者に提供するサービスの品質を高めることができるということも意味しています。Drupalの可能性は広がり続けています。

 

【参考情報】