EX(従業員体験価値)とIT

企業で働く多くの人々にとってIT部門はセキュリティにやかましくて、USBやクラウド・ストレージの使用を認めてくれず、ノートPCの配布に消極的で、持ち出しとなるといろいろ制約してくる厄介な存在かも知れません。ソーシャルネットでの発言を禁止したり指導したり、ネットワークが遅かったり途切れたりしてもなかなか直してくれなかったりと、面倒のタネだったりするかも知れません。

しかし、今ではスマートフォンやタブレットが普及し、SlackやChatworkのようなビジネスチャットの導入も進んで、一部の単純作業にはRPAの導入も始まるなど、テクノロジーの活用は人材活用にとって非常に大きな役割を担うようになってきました。

かつて、PCを使う仕事に就く新入社員や中途採用の社員、または派遣社員の方が入社すると、人事部や総務部がその人に使わせる社員番号やメールアドレス、グループウェアやファイル共有サーバーのアクセス権限などを決めてIT部門に伝え、IT部門はそれに従ってメールやグループウェアの準備をして、IT機器利用上の注意事項を伝える程度でした。人事部とIT部門の間には、静的な関係しか存在しなかったのです。

しかし、今では在宅勤務、サテライトオフィス、遠隔コラボレーションなどが一般化しており、勤怠管理も複雑化してきました。働き方が変われば評価システムにも影響があります。
また、単なる管理という視点では不十分で、ITによって従業員のモチベーションが上がり、生産性や創造性がアップするようでなければなりません。

また、IT部門の目の届かないところで従業員が独自の判断でさまざまな便利ツールを導入して、プロジェクトを推進したり、進行を管理したりする場合もあります。アカウント管理が不十分だと、情報漏洩につながりかねない状態になってしまいます。
それでけでなく、参画するプロジェクトごとに別々のビジネスチャットやスケジューラー、Web会議システムを使っていたら、便利なはずのツールがPCやスマートフォンの画面上にいくつも並んで、何が大事な案件で、どのメッセージの処理が優先か分からなくなってしまいます。従業員体験価値(エンプロイー・エクスペリエンス)は、さまざまな局面で低下してしまいます。

IT部門はユーザ部門や人事部、総務部とこれまで以上に密接にコンタクトして、組織を活性化し、生産性を向上し、クリエーティブでイノベーティブな従業員を増やして支援するという、難しいけれども非常に重要な役割を担わなければならなくなってきています。

<参考資料>