品質管理のトランスフォーメーション
日本の工業における品質管理はかつて世界でも最高レベルだと言われていたようです。けれどもさまざまな分野の大手や老舗メーカーがリコールを連発したり、検査結果を改ざんしたりと、かつての輝きは失われてしまったようです。
品質管理の部門は最近では品質管理部ではなく品質保証部と呼ばれるケースが多いとか。ある程度の歩留まりを許して不良率を一定の基準以下にコントロールするというのではなく、出荷するからには一定の品質基準を満たしていることを請け合うということなのでしょうか。
ハードウェア製品の検査やソフトウェアのテストは、自動化が進んでいます。逆に自動化しなければ、検査や試験はとても非効率で、場合によっては不正確です。同じことの繰り返しは、人間よりも機械に向きます。検査、検査、試験、試験では、検査する側、試験する側に疲労が蓄積します。エラーの原因になります。
検査やテストが手作業だと、検査報告書やテスト結果も手作業で作成されます。つまり、時間がかかります。
多くの場合、検査レポートのフォーマットは標準化されていません。読み解く側にも熟練を要します。自社内であればチェックが形骸化します。顧客企業(つまり発注側企業)からすれば、解読が難しいレポートでは役に立ちません。
そして、社内でも社外でも、情報のやり取りには電子メールが使われてきました。よほど上手にメーラーのフィルター振り分け機能を駆使して上手にフォルダー分けしていない限り、受信したメール、送信したメールは長い長いスレッドに埋没してしまいます。似たような内容のメールが大量になりますから、検索も難しくなります。
デジタル品質保証プラットフォームのようなものが構築できて、工場から小売り、顧客にいたるまでのサプライチェーンで情報共有できたらどうでしょう。
製造業者はリアルタイムにデータを提供でき、データの分析結果を共有することができます。こうした透明性をもったベンダーと従来型の受け入れ検査、抜き取り検査でしか対応できないベンダーのどちらが顧客の信頼を獲得するでしょう。透明性は競争優位性に直結します。
目視検査をAIカメラに代行させる技術はすでに各国で実用化されています。機械学習とカメラを使えば疲れ知らず。オペレーターの熟練度や経験に左右されません。人が行う検査で一貫性を保つのは難しいことです。
プログラムのテストも自動化が当たり前になっています。もちろん、ユーザビリティを確認したり、いわゆるモンキーテストや負荷テストしたりするには人間が関与することもまだまだ多そうです。
それでも自動化は時代の要請でしょう。テストそのものの自動化もそうですが、人海戦術でテストした場合には、テスト結果の報告書の作成が膨大な手作業になったりします。発注側から厳しく、画面遷移のエビデンスを残すように求められたら、テスターはブラウザ画面の遷移と、スクリーンのキャプチャーを延々と繰り返して、膨大な画像データを張り付けた報告書を作成しなければなりません。自動化ツールの中にはテストの実施だけでなく、結果の分析も自動化してくれるものもあります。
特にWeb系でなく組込み系の場合、装置や機器との制御/計測インタフェースが多様で、テストの設計段階から支援ツールを活用することで効率化を図ることができます。
<参考情報>