宗教とデジタル
日本でも新しく信者を増やしたり、信者の人々にさまざまな内容を伝えたりするために、古くから新しい技術が活用されてきました。
例えば、ラジオやテレビ番組、映画などのメディアを使って宗教的な物語や、教義などを伝えるということは普通に行われてきました。ポッドキャストやYouTubeにも新興宗教だけでなく古くからある仏教などの宗派のチャンネルがあって、信者や信者以外の人々へ向けて情報が発信されています。
アメリカではキリスト教などの宗教団体がテレビやラジオの放送局そのものを所有していて、さまざまな番組の放送をずっと昔から続けてきていて、中には相当な額の寄付金を集めているところもあるそうです。
教会や寺院に人々が足を運んで、お堂などで牧師や僧侶、宮司などの説教や説法、祝詞などを見聞きすることが基本とされながらも、テレビやインターネットを使えば、空間的な距離とか時間といった制約を超えて、聖職者と信者の人々との「コミュニケーション」が活性化できます。
新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりが、宗教団体によるデジタル技術の活用を強く後押ししたようです。
キリスト教の場合、教会に行く日曜日だけが熱心なキリスト教徒でそれ以外の日の信仰心に疑問があるとか、日本の場合には冠婚葬祭などの特定の機会に宗教施設の利用が偏っているなど、用語としては不適切と思いますが、ネットマーケティングでいうところのエンゲージメント強化が課題です。
これをリアルな施設や既存のメディア(郵便など含め)で解決するのは難しいと思われますが、いわゆる「おうち時間」が増えて、リモートワークのためにネットに自宅でつながっている時間が増大した人々に対しては、ネットを活用したアプローチが効果的です。
どこの国でも、どういった宗教であっても、荘厳なお寺や教会などの宗教施設というものは部外者にとっては近寄りにくい場所です。けれどもライブストリーミングなどで内部の様子やいろいろな儀式の様子が自宅から確認できれば、もともと多くの場合、宗教施設の内部にはさまざまな装飾が施されていますし美術品も多かったりしますから、それまで二の足を踏んでいた人たちが足を運ぶきっかけになることは十分に考えられます。
宗派によっては説法や説教を一方的に聞くのではなく、経典や聖典を信者たちがグループで研究する場を持つところも多いようです。その場合、Web会議の威力は言うまでもなさそうです。
パンデミックの前には、例えば外国人旅行客を招き入れるためにお寺や神社がフリーWi-Fiを積極的に導入していました。
ヨーロッパの教会の中には、聖堂の中で町の人々が集うという中世から続いてきていたのに最近になって失われそうになってきた習慣を取り戻してもらうためにWi-Fiを導入したところもあったそうです。聖職者であっても、世界中に点在する人々とのつながりを強める手段として、デジタルを上手に使えるかどうかが、いろいろな意味で大切になってきているようです。
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