不動産テック
デジタル・イノベーションは私たちの生活や仕事のすべての領域にわたって素早く広範囲に渡って侵入し、そのスピードは勢いを増しています。
不動産ビジネスの領域も例外ではなさそうです。不動産事業には、その物件の特性、所有者と家族構成、賃貸人、エージェントなど多くの登場人物がいて、特に賃貸ではなく分譲の場合には金融機関のローンを含めて購入の検討段階が長いですから、不動産事業者にはCRMが有効です。適切なCRMがあれば、スタッフ管理も顧客管理も改善され、ドキュメント類へのアクセスも容易になるはずです。
逆に言えば、適切なCRMがなければ、顧客管理はスタッフのメモや記憶に頼る部分が大きくなって、必要なときに必要な情報を活用することが難しくなります。売り手から見れば大勢いる顧客の一人ですが、購入を真剣に検討している買い手から見れば、何回が接触したエージェントがまったく自分の事情に関心がなく、毎回同じような質問をしてきたら落胆して別の物件を探し始めるかも知れません。
情報が多く、それらが変化していて、しかも、情報の活用が勝負のカギを握っている業界では、ビッグデータ分析と、AI、機械学習の活用が重要な意味を持ちます。
さらに、不動産ビジネスには膨大なペーパーワークがつきものですから、RPAの効果も大きくなります。重要事項の説明にあたっても、分厚い紙の資料では実際問題、説明を受ける買い手の理解も中途半端なものになりかねません。タブレットなどを活用すれば、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
さらに、日常の業務もAIに「監視」させれば、トレンドの分析だけでなく特異な案件の抽出にも役立ちます。不動産ビジネスが大規模化している場合、マネージャーがすべての案件の特性や進捗状況に目を光らせて、おかしな挙動があれば注意するというのは実質的に難しいですが、AIは疲れ知らずに見守ってくれます。
情報の活用は、事業運営をリアクティブからプロアクティブに変革してくれます。また、クラウドの活用で、現場とオフィス、あるいは他の地域の支店や代理店との情報活用も容易になります。
拡張現実(AR)は現実世界と仮想現実のコンテンツを組み合わせてユーザーに提示する画期的な技術の一つでさまざまな分野で応用されています。視覚に訴えかける技術を上手に使えば、建設中の高層ビルの1室からの外の景色を疑似的に示したり、まだ前の借り手が住んでいるアパートやマンションの部屋の中の様子を見せたり、改装後や家具を置いたり模様替えを行った後の様子を事前に見てもらったりすることが簡単にできます。手書きのイラストと違って、ゴーグルを装着したまま首を回せば、見る角度によってどのように光景が変わるかも見せることができます。
こうした技術以外にも、IoTによって室内外にさまざまなセンサーを取り付けたり、電源や空調の設定温度、お風呂やAV機器、庭の水まきやペットの餌やりなどを自動や遠隔で行うことが可能になってきています。換気や冷暖房を効率的に行えば、エネルギー消費を抑制することができます。
監視カメラの映像を常時人間か監視することは難しいですが、AIがいつもと違う異常な動きを検知して警報を発するなら、24時間体制で建物の防備を固めることが可能になります。
このように、不動産そのものの付加価値を高めることにも、不動産を取り扱う事業そのものの質を向上することにも、デジタル技術は広く使われています。
<参考情報>