アウトドア産業とデジタル
世界を大混乱に巻き込んだCOVID-19で多くの産業がネガティブな衝撃を受け、未だに多くの業界で回復の目途が立たず悪戦苦闘が続いています。
そんな中、アウトドア産業は2020年の段階から比較的早期に回復の兆しを見せた数少ない産業のひとつだったようです。
ウイルスの感染は換気のよくない室内で起こりやすいということですから、逆に言えば屋外で、自然の風に吹かれながら歩いたり、お互いに離れた場所に座ってBBQなどを行うことは素人考えでも安全安心なアクティビティに思えてしまいますね。
トレッキングなどではGPSを使ったトラッカーなどが以前から使われていましたし、LPWAなどセルラーネットワークを補完するネットワークにつながったデバイスを持つことは、まさかの事態への備えとして重要ですから、トランシーバーなどのギアは重要だったに違いありません。
バーベキューのグリルも、焼こうとする肉に温度計の針を突き刺して、温度変化に応じて料理工程や温度調整を教えてくれるガジェットやアプリもあるようです。IoTを活用すればキャンプ場の状況は遠隔地からでもモニタリングが容易になります。
一方、デジタルマーケティングという視点で見ると、オンラインのデータ活用が進んでいます。広告主は、単に宣伝するだけでなく、プロモーションから受注、サービス提供、アフターサービスに至るまで、カスタマージャーニーの各ポイントでデータ分析から得られた洞察を活用し、より満足度の高い経験をデジタルでもリアルでも提供することができるようになっています。例えばキャンプ場の場合、駐車場のスペースやキャンプする場所について明らかに上限があるため、在庫管理が脆弱だと、遠隔地まではるばるやってきた顧客に残念な経験をさせてしまう可能性があり、そうした体験がSNSなどでシェアされてしまうと、潜在顧客を誘引する上では大変な問題になります。
逆にアウトドアのアクティビティは写真や動画の訴求力が強力です。Instagramなどを上手に活用している施設は、より多くの人々を引き寄せ、楽しみ方、フォトスポット、危険を避けるための行動などをユーザ同士で教えあってくれるように促すことも可能です。
アメリカの場合はアウトドア雑誌の表紙にはこれまで筋肉質な若い白人男性が多く起用されてきたようですが、こうしたステレオタイプな捉え方はすでに過去のものになっています。アメリカであっても日本であっても、訴求する相手は若い男性だけではありません。女性や高齢者、若年層などには、それぞれアウトドア活動に対する別の視点がありますから、アウトドアのブームに合わせて、多様なニーズに答えるコンテンツの発信がマーケティング活動において重要になります。
自然の中で、やや過酷な体験を求める人もいれば、屋外での飲食とか家族や仲間との会話を楽しむ人、非日常空間で眠り目覚める体験を重視する人、景色や夜空を楽しむ人などニーズはさまざまで、誰もがマッチやライターなしで火を起こすことを望んでいるわけではありません。
日本でもテレビ番組が若い女性のキャンパーを増やしたように、アンバサダーやインフルエンサーの設定がトレンドを主導することも多そうです。
アウトドアビジネスの回復は、他の業界よりも早かったものの、あくまで国内市場の話。来年は、海外旅行先でアウトドアを楽しめるようになっているといいですね。
<参考情報>
The Outdoor Industry Vs. The Digital World
Top 5 Digital Transformation Trends in 2021 - OOH Industry
Outdoor Industry: Digital Marketing Concepts for Outdoor Brands