生鮮野菜・果物業界のDX
食品のロジスティクスの中でも、生鮮食料品の扱いには細心の注意が必要です。魚介類に比べれば常温での保管が比較的可能な野菜や果物も、貯蔵寿命には限界があり、腐敗を避けるためには徹底した温度管理を伴うサプライチェーンを構築して、状況を常に可視化しておく必要があります。電源の切れた冷蔵庫に入れて運んでいては意味がありません。
農業でもIoTやAIの活用が始まっていますが、野菜や果物については出荷の段階での選別に当たって以前からカメラによる画像処理技術が活用されていたようです。
野菜や果物は大きさ、重さ、形状、色(特に害虫や病気による変色)により出荷段階で選別が行われいます。
慣れた人が目と手を使って瞬時に選別する様子は見事ですが、人間は長時間に渡って作業をすると疲れてしまいます。AIは疲れ知らずで、同じ精度で何時間でも選別作業を続けますし、人の場合と異なり、見る目によってバラツキが生じる可能性も少なくなります。
食品ロスについてはいわゆる先進国では主に最終消費者に近いレベルで多く発生します。つまり、買う量が食べる量よりも多く、消費者が家庭などで食べずに廃棄してしまったり、鮮度を優先する小売店と消費者の選好によって、小売の現場で捨てられてしまったりする比率が高いそうです。これに対して途上国ではサプライチェーンの構築に難があるなどの理由から生産地と流通でもロスが発生しているようです。
世界的に見ると業界のイノベーションはIoTとビッグデータが牽引しています。データの収集と分析、データの正確な管理、意思決定に役立つ情報への変換などは、いずれも消費者に安全に食品を届けるために不可欠であり、業界が利益を生み出すためにも不可欠です。
スーパーマーケットの野菜や果物の売り場を見れば明らかなように、これらの産地は消費国から遠く離れている場合が非常に多くなっています。品質管理と安全性、トレーサビリティは業界の基本的な原則と言えそうです。
デジタル技術は生産者、梱包業者、配送業者、貿易業者、流通業者、小売業者のすべてにとって、チャレンジであり、情報のオーケストレーションによってすべてのプレイヤーが恩恵を受けます。
<参考資料>