デジタル・ヘルスケア
日本の場合、離島や過疎地域における医療の提供に向けて遠隔医療がかねてから望まれていたようですが、都市部ではクリニックや病院に行列ができて、待ち時間は極めて長く、診療時間はとても短くて、たくさんのお薬を処方されてしまうという状況が長く続いていました。
コロナはそうした状況を大きく変えたようです。世界的にも遠隔医療は大きく前進しました。また、医療機器にはAI(人工知能)が適用され、医療記録にはブロックチェーンが採用され、医師の作業の合理化、システムの最適化、人為ミスの削減、患者負担の軽減がデジタルの力で同時に実現されつつあるようです。
その一方、製薬会社や医療機器メーカーのデジタル化は比較的遅れているという指摘もあります。
Webでの外来診療の予約は、待合室での「密」を避けるために重要です。ただでさえ体が弱っている人々が大勢、自分の診察の順番を待ったり、会計が終わるのを待って待合室に密集しているのは決して良いことでないでしょう。
医療提供側もネットでクリニックや病院を探す人が増えるにつれて、デジタルマーケティングの重要性に注目し始めているようです。
医療機関のサイトの多くが、単に診察時間やアクセス方法だけでなく、病気の情報、治療法、薬や副反応、場合によっては医療費の参考情報をWebで公開し始めています。こうしたコンテンツは、初めての患者さんを誘引する上で重要なツールとなります。
大病院などではビッグデータにも注目しているようで、患者の記録を分析して投薬ミスを抑制したり、同じ病気に繰り返しかかる人を洗い出して、予防計画を立てるのに役立てたり、医師や看護師、医療スタッフの適格な人員配置にも役立てているそうです。
バーチャルリアリティ(VR)は患者さんの治療方法を大きく変えているとか。投薬だけに頼らず、片頭痛や術後の痛み、ストレス障害、高所恐怖症などの改善に、薬物よりも安全な治療方法としてVRが活用されているそうです。
VRヘッドセットを着けて運動の動機付けを行ったり、自閉症などの症状を持つ子供などに社会との接触を体験したりする目的で利用されることもあるようです。
また、医師や看護師の側でもVRを使ったシミュレーションで手術や療法を疑似体験してスキルを挙げたり、複雑な手術のプランニングに役立てる例もあるそうです。
心拍数や心電図、歩数、血圧、血中酸素濃度、体温などを計測することができるウェアラブル機器が続々と登場していて、中にはFDAなど規制当局の承認を得ている世紀の医療機器になっているものもあります。
自宅に血圧計がない人は、何週間かにいっぺん病院などで血圧を測ることになりますが、こうしたスナップショットには余り多くの情報がありません。リストバンド型の血圧計が常時、血圧を測って、Bluetoothなどでスマホにデータを送り続けてくれていたら、当人の血圧が一日の中でどのような変化を遂げるのかが分かります。食事や通勤・通学など移動の影響、服用する薬の作用、さらに、仕事のストレスなどとの相関も追跡することが可能になります。
保険会社もこうしたウェアラブルデバイスからの情報に基づいて保険料を変えたりする動きが出ています。
このほか、AIを活用した新薬開発や、ブロックチェーンを使った信頼性の高い電子健康記録など、ヘルスケアのさまざまな局面でデジタルが新時代を切り開いています。
<参考情報>