ブロードバンドとWeb3
インターネットの黎明期には、家庭のパソコンからインターネットに接続している人は少数派だったに違いありません。
そのころ、家庭まで光ファイバー回線は敷設されていません。あったのはアナログの電話回線か、デジタルのISDN回線です。ISDNも回線そのものは電話回線と同じものでした。
アナログ電話でもISDNでも、送受信可能なデータの速度はせいぜい毎秒数十キロビット程度でした。写真やプレゼンテーション資料を送るのに何分も何十分もかかりました。ストレスなく動画を送受信することは、ほぼ不可能という状態でした。
そもそも、電話回線の使用料金は従量制でした。インターネットのアクセスポイントまで電話をかけると3分10円ほどの料金がかかりました。もし、アクセスポイントが遠くにあったら、さらに高額の通話料金が発生しました。
こういう状態では、例えば、ECサイトができたとしても、商品情報を調べている間にどんどん通話料がかかってしまいます。ショッピングモールに入ってウィンドウショッピングしている間に、駐車料金がどんどん加算されるようなイメージでしょうか。落ち着いて買い物を楽しむことはできません。
そんな時代でも、いつの日にか人々はネットで買い物をし、旅行やディナーを予約したり、リモートで仕事をしたり、世界中の人とビデオ会議でつながる未来が来ると信じていた人が大勢いました。
その後、ADSLサービスが始まって、ブロードバンド常時接続の時代が来ました。毎月数千円の料金がかかりましたが、その料金は定額制で、払っていれば使い放題。スピードも毎秒メガビットまで高速化されました。
それによって、人々はネットで動画を見るようになり、買い物を楽しむようになり、Skypeなどを使って対面の通話を楽しむようになりました。
Wi-Fi環境が普及して、スマートフォンを使う人が多数派になり、3G、LTEとモバイル通信も高速化したため、誰もがいつでもどこからでもネットにつながることが当たり前になりました。そうした中で、Web2.0時代のプラットフォーマーが膨大な数の利用者と収益を集積し始めました。
ブロックチェーンなどWeb3にまつわる動きに対して懐疑的な人々がまだまだ大勢いるようです。遅すぎるとか、使いにくいとか、高すぎるとか、有望なユースケースが見当たらないとか。これらの批判は、インターネットの黎明期にインターネットに対して向けられた言葉とよく似ています。
インターネットの初期の諸課題、つまり、高いとか遅いとかいった課題はブロードバンド常時接続が解決し、スマホとモバイルがサービス品質の向上を加速しました。
Web3についての懐疑論や批判は、さまざまな世界中のコミュニティーが解決しようとしています。特に、国境を越えた支払いが「民主化」されつつあることから、新興国を最初から巻き込んだ形でWeb3が早期にクリティカルマスを超える可能性は十分にありそうです。