DXのDはデジタル、Xは?

デジタルトランスフォーメーションとは何でしょう。よく、DXと略されていますが、Digital TransformationならDXでなくてDTでは? ユーザ体験はUX、デジタル体験はDXと略されますが、このXはexperience(=経験、体験)の2文字目ですが、transformation(=変形、変質、形態転換)にはxが含まれていません。一説によると、英語ではex-やtrans-といった接頭辞をx-と省略する習慣があるとのこと。例えばtransmit(=送信する)はxmit、translate(=翻訳する)をxlateなどと略すことは本当にあるようです。

さて、デジタルトランスフォーメーションを最初に提唱したのはスウェーデンのウメオ大学(Umeå University)のエリック・ストルターマン(Erik Stolterman)教授で、2004年、今から16年も前のことだそうです。“Information Technology and the Good Life”というタイトルの論文の中で"The digital transformation can be understood as the changes that digital technology causes or influences in all aspects of human life."という説明があります。「デジタルトランスフォーメーションとは、人間の生活のすべての面においてデジタル技術が起こす変化、あるいは、デジタル技術が影響を与える変化であると理解さえ得る」ということで、これは単に、紙ベースの企業が電子印鑑を導入してペーパーレスを目指すとか、経費精算のためのクラウドサービスを導入するといった変化のことではありません。デジタル技術のよい側面によって、私たちの生活も仕事もより良い方向に変えていくことがDXの本質のようで、しきりに乗り遅れないように煽るような講演やネット記事もありますが、すでにさまざまな場面で私たちはDXの恩恵を受けています。

例えば、新型コロナウイルス感染症によりテレワーク(在宅勤務)が推奨されましたが、Web会議やVPN、ビジネスチャットなどのお陰で、首都圏の場合などは特に満員の通勤電車に乗らなくても、仕事を進めることができることが分かりました。オフィスを持たないことを宣言する企業も登場しています。
電子商取引(EC)にはすでに長い歴史がありますが、買い物や外食の機会が激減して、飲食店側も消費者の側もネットを使った売買に頼らざるを得ない状態になり、決済手段も多様化してきました。魚を買いに出かけて財布を忘れてもスマートフォンさえ持っていれば買って帰ることができる時代です。

ただ、実際には2010年代後半にはDXはIT(情報技術)を用いた企業の競争力の強化と同じ意味に使われ始めました。デジタル技術が企業の競争力アップにだけ使われるというのは、逆に偏った見方かも知れません。企業には顧客企業がいて、最終的には必ず消費者である多くの人々と繋がっていますので。

また、給付金の電子申請が書類申請よりも処理に時間がかかるなど、日本でIT化を進めた結果、思わぬ弱点も明らかになってしまいました。官公庁のDXは、まずはこれまでの評価から始める必要があるのかも知れません。

デジタルトランスフォーメーションがDXと略される理由はお分かりいただけましたでしょうか。