旅行代理店とデジタル

世界中の旅行代理店が新型コロナウイルス感染症によって大きな打撃を受けました。

かつては日本でも国内旅行であれ海外旅行であれ、団体であれ個人であれ、航空券やバスの乗車券の手配、ホテルやレストランの予約、旅先での交通手段や、場合によっては観光ガイドなど、すべて旅行代理店の旅行の専門家が代行してくるのが普通でした。

代理店


初めて海外に行く人には、航空券の手配、ビザや予防接種の心配から保険の紹介まで至れり尽くせりでサポートしてくれました。
インターネットがない時代に、自分ですべての準備をすることの手間を想像してみれば分かります。海外のホテルに電話をかけて、こちらの名前を正しく伝えるだけでも大変なことだったでしょう。
また、旅行先で病気にかかったり事故に遭遇した場合にも旅行代理店の現地の事務所や提携先が助けてくれるようになっていました。
旅行代理店にはさまざまな情報が蓄積され、常に新しい知識も積み重なっていました。とても個人が旅行ガイドの本などから得る情報では、深さも広さも情報の鮮度でも太刀打ちできなかったはずです。

インターネットがすべてを変えました。旅行の計画を立てるに当たっては膨大な情報にアクセスすることが可能です。必ずしも読みやすいとは限りませんが、外国語のウェブサイトであっても日本語訳で読むことができます。
旅行中にはモバイル端末が助けてくれます。地図や分厚いガイドブックを旅先で開く必要はありませんし、観光名所からホテルへの道順にも迷うことはありません。
何か分からないことがあって、検索してもうまくいかないときにはチャットボットが助けてくれます。予約にも対応してくれますし、天気予報を教えてくれたり、ATMの場所やバス停の場所を教えてくれます。
ホテルの部屋にはタブレットが置いてあったり、QRコードが示されています。ルームサービスを依頼するときに慣れない外国語を話す必要はありませんし、オーダーが正しく伝わったか不安になる必要もありません。

SNSのデータをマイニングすることで、旅行代理店も宿泊施設も観光客のニーズやウォンツを正確につかむことができるようになりました。口コミやレーティングをポジティブなものに変えるためにホテルやレストランが努力してくれれば、いっそう観光客に選ばれる機会が増えることになります。

バーチャルツアーとかインタラクティブツアーも一般的になりつつあります。
旅行の前や、旅行途中に、ネットとVRを使って旅行先を事前に疑似体験したり、情報を見つけておきたいというニーズが顕在化したようです。旅行代理店や大手ホテルチェーン、美術館、観光施設などは競ってバーシャルツアーのコンテンツ提供を始めています。

旅行


今では個人で外国語サイトなどを駆使して旅行の計画から手配、現地での移動か観光、宿泊、支払いなどを全部こなすことは以前ほど難しくありません。
それでも、やはり個人でやるには相当な手間がかかります。デジタルにシフトした旅行業界には、さまざまな付加価値を提供する余地がたくさんありそうです。



<参考情報>