物流業界のDX

ここでもモバイルの影響が色濃く出てきているようです。と言いますのも、モノを運ぶ物流の場合、トラックや鉄道、航空機や倉庫、それらを操る運転士、パイロットなどを思い浮かべるかも知れませんが、彼らはみな、労働者であると同時に消費者です。以前よりもモバイル機器の操作に習熟しています。

 

さらに、物流の両端にいるのも人々です。個人から個人へ荷物や書類を運ぶ場合もあれば、法人から個人へ、個人から法人、法人から法人へモノを送る場合もありますが、いずれにしても、AI(人工知能)が自動梱包、自動出荷でもしない限り、送るのも人、受け取るのも人です。これらの人々は、世界中に存在しますが、世界中の人々が今や、スマートフォンやタブレットの操作に慣れています。

以前は、物流などの業務に使う端末機器はハンディターミナルなどと呼ばれる専用機でした。頑丈で、落としても壊れず、レシートなどを印刷する小さなプリンターや、バーコードを読み取る小さな装置がついていて、時には受領者が受け取りのサインを記入するためのタッチパネル式の小型ディスプレーが装備されていることもありました。

 

今では多くが汎用的なタブレットやスマートフォンに置き換わりつつあります。もちろん衝撃や水などに強くなければ使い物にならない環境では別ですが。

 

送る側も受け取る側も、モバイルに慣れ親しんでいます。すると、集荷を依頼するとか、料金を支払うとか、今、どこまで運ばれたか確認するといった送り側の手順もスマホ上でできると便利ですし、配送日時の事前通知とか、受領のサインとか、代引きの場合は支払いとかも、居間やオフィスのパソコンの前に座ってやるのではなくて、玄関やオフィスの入り口に立って、スマートフォンの操作でやった方がずっと便利です。

 

また、物流は時間との勝負という側面が非常に強い業界です。また、効率性、最適化も極めて重要です。例えば、トラックが少ない荷物を載せて発車してしまった直後に、同じ場所へ送る荷物が届いたら、トラックを呼び戻すか、もう1台走らせるか、次の予定時刻まで待つしかありません。積載率の低いトラックや貨物列車を走らせることは環境を守る意味でも避けなければなりません。

物流という流れを、情報の流れが整理して、無駄をなくし、時間を短縮することが大切です。大量のモノが毎日流れるわけですからビッグデータとしてデータを処理すれば、さまざまな改善が可能になります。天候、曜日から他国の天気や経済状態なども物流に影響を及ぼします。巨視的にモノの流れが見えてくれば、配送センターのロケーションが良いのか悪いのかも分かってきます。これらは確実に競争優位性の源泉になります。

 

ところが、実際のところ物流業界には数多くの中小規模の事業者がいて、IoT、5G、ビッグデータなどとは無縁の事業を続けています。しかし、バーコードやRFID、電子メールなどが浸透するのにかかった時間に比べれば、QRコード、電子マネー、NFC、GPSの利用などは、非常に短い期間でさまざまな分野に浸透しました。今後もデジタル技術の採用は加速し続けることでしょう。

 

今後は、自動運転など、AIを活用した技術が広がり、電気自動車の数も増えて、物流や人の移動もさらに進化を続けるものと予想されています。高速道路上の自動運転が可能になるだけでも長距離トラック運転手さんの負担は相当軽減されます。運転すべてが自動化されなくても、死角を補ったり、ブレーキが自動でかかったりして安全性が高まります。最適ルートを常時計算したりなんてこともAIにはお手の物。

 

実際には自動運転にせよ、スマートな信号や道路にせよ、渋滞情報にせよ、物流業界やその中の1社に解決できることは限られていて、政府や研究機関、異業種、外国などなどさまざまな組織の連携が必要です。経済を支える物流が、スマートに進化することは世界にとってとても大切なことではないでしょうか。

 

 

<参考情報>