劇場のテクノロジー

演劇の歴史は古く、デジタルテクノロジーの導入よりもずっと前から照明技術、舞台の回転やせり上がり、音響など、臨場感と観客の没入感を増すためさまざまな技術が取り入れられてきていますね。

新しいテクノロジーは、観客の視覚と聴覚、嗅覚に働きかけることができるそうです。映画館などでは、触覚などにも働きかけて、風や熱気が顔に当たったり、座席が動いたりとどんどん進化していますが、演劇の場でもいろいろな技術の導入が進んでいるようです。

演者

例えば、非常に小さなワイヤレスイヤホンがあれば、舞台上の俳優は長大なセリフを丸暗記することではなく、演技そのものに集中することができます。舞台袖から適切なタイミングで助手の人がセリフのプロンプターとして読み上げれば済むからです。

音響と照明を同期させるためには、例えば、舞台上に雷を光で再現して、同時に落雷の大音響を観客に聞かせるためには、照明係と音響係の息の合った操作が必要でした。

コンピュータとネットワークによって、複雑な同期もプログラムしておけば、何度でも間違いなく再現することができます。LEDライトはデジタルネットワークで制御することが容易なデバイスです。ステージに投影される光は、さまざまなパターンを織り成し、強度も色も自在に変化させることができます。一人1台の照明装置に技師がついていた時代と異なり、数百の照明を1台のライトボードから1人のエンジニアが操作することができるようになりました。

マイクも、俳優の衣装のどこかに大きな送信機を装着させてマイクだけ口に向けていた時代からすると長足の進歩で、肌色の目立たないヘッドセットや、髪の毛に隠せるマイクが利用されているそうです。スピーカーシステムも進化して、効果音や音楽は照明と連動する形で、劇場全体に行き渡る計算されたスピーカー配置と音量調整により、どの席からも臨場感のあるサウンドに没入することが可能になりました。

音響装置や照明装置を舞台の随所に取り付けることをリギングというそうですが、このリギングも職人の経験に頼っていた時代から、コンピュータの助けを借りる時代に移り、省力化が進んでいます。

舞台装置はケーブルシステムやモーター、電子制御ボックスを介してネットワーク化されており、制御ソフトウェアによって適切なタイミングで適切なスピードで移動することができます。

劇場

舞台の設計には3Dソフトウェアが使わていて、小道具の制作には3Dプリンタが活用されているそうです。使用する小道具を作るのは職人の手作業ではなくマシーンに変わりつつあるようなのです。

劇場の客席を香りの蒸気によって匂いで満たすことで演出効果を高める試みも行われています。料理の匂いや、海辺の匂いを放出し、吸引するシステムによって、観客の観劇経験が高度化しています。

舞台上の俳優や効果音、音楽、照明、舞台転換などには適切なタイミングで合図(キュー)を出す必要があります。

これらの手がかりとして旧来から照明の変化や効果音、予め定められた役者の動きやセリフなどが使われてきましたが、今ではモニター、ヘッドセット、ライトなどが演者にも裏方にも柔軟にキュー出しをすることが可能になりました。

今後もホログラムその他の3D映像技術、ロボティクスやアニマトロニクスなどによって、舞台上に架空の生物などを登場させるなど、テクノロジーによって多彩な表現がいくつも試されていくことでしょう。

<参考情報>