放送業界とデジタル

インターネットの普及が始まったころ、テレビやラジオはこの新しいメディアを敵視していました。特に、著作権を無視した録画や録音がネットを介して無料で流通する状態が長く続いていましたから、ネットはスポンサー収入を台無しにする敵対的なメディアと目されていたようです。

今ではバラエティー番組やニュース番組が世界各国のSNSに投稿された映像や情報を、もちろん許可を得たうえで放送の一部に取り入れることが当たり前になってきています。ネットの情報がなければテレビ番組が成り立たない場合さえあるようです。

そもそもテレビやラジオが衛星ではなく電波塔からの電波でブロードキャストされていた時代には、ロケーションベースの強力なメディアだったと言えるのではないでしょうか。

番組

今でも各地方のローカル局ではその土地ならではの情報番組を制作していて、その土地に根付いた企業のCMを流しています。テレビもラジオも雑誌も新聞も、BluetoothやWi-Fi、GPS情報を活用した現在のロケーションベースのサービスを、今よりも粗い粒度で提供しているメディアでした。

しかし、ネットに比べると旧来メディアはコンテンツの制作に巨額の費用がかかっていましたし、時間もかかっていて、さらに悪いことに、広告の効果を測定することが非常に困難でした。CMを放送した翌日に新製品が売れたとして、その中の何割がテレビCMの効果で、何割が新聞広告やPOPの効果かを計測することができなかったのです。

テレビもラジオも制作した番組をネットで二次利用することに新たな商機を見出そうとしています。どちらの番組もテレビ受像機やラジオ受信機といったハードウェアから解放されて、スマホやタブレットで持ち運ばれるようになり、リビングルームから子供部屋へ、自宅から通勤電車やカフェへと広がるようになりました。

NetflixやPrime Videoなどのエンターテイメントプラットフォームは爆発的な成長を見せています。こうした新しいメディアはスポンサーCMにより無料で放送されていたかつてのテレビと違って視聴者からの料金で成り立っています。観たくない人は観ないので、ターゲットを絞った自由な表現が可能になっているようです。また、AIを活用してこれまでの視聴記録などに基づき、その視聴者が気に入るであろうコンテンツをリコメンドすることで、さらなるエンゲージメントにつなげています。

テレビやラジオの番組は、番組単位や出演者の単位でSNSを活用し、予告編とは違ったかたちで視聴者を誘引しています。

SNSであれば、出演者との直接的なつながりを強く意識することができますから、視聴者にとっても番組に対する愛着が高まります。オフショットや未公開映像・音声をSNSで配信すれば、番組を見た人の満足感も高まります。

ラジオ番組への投稿は、かつては20世紀にはハガキやファックスが主流でしたが今はメールやメッセージです。視聴者参加のためにはスタジオやホールに視聴者を集める必要はなく、電話やWeb会議を使えば双方向の番組制作が可能となっています。

ラジオやテレビがふたたびメディアのチャンピオンに返り咲くことはなさそうですが、短期間のうちにYouTubeやOTT(オーバーザトップ)によって追いやられてしまうこともなさそうです。

デジカメやスマホのカメラの普及で誰もが高画質な写真を撮影することができるようになった今でもプロのカメラマンが存在しているように、誰もが個人放送局になるツールを手に入れた今でもコンテンツ制作のプロには活躍の場があるということのようです。

テレビ

<参考情報>