中小企業のDX

どこの国でも中小企業(SME)が地域経済で果たす役割は大きく、市民の多くは大企業ではなく中小企業から収入を得ているので、パンデミックに端を発する危機的な状況を乗り越えることができるかどうかは、人々の生活に直結する重要な問題でした。

 

日本では特に飲食業の営業が制限を受け、経営が大きな打撃を受けたことは明らかのようですが、多くの中小企業は(飲食業も含めて)人々の消費行動や習慣、好みがCOVID-19で大きく変化したことに対応して、柔軟に対応してきたようです。

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多くの企業でリモートワークが試みられました。つまり、かつての通勤者だった消費者は、家にいる時間が増え、長距離を移動する時間が減りました。日用品の買い物の仕方は、大きく変わりました。食品や食材の宅配は日常生活に完全に取り込まれたようですし、接触する時間を少なくするためにスーパーマーケットでの買い物はオンラインで済ませて、帰宅時に立ち寄ってピックアップする形態(BOPIS)も大勢が試したことから、今後も重宝され続ける可能性があります。GoogleMapではBOPISに対応した店舗でピックアップする場所を正確に表示する機能まで実装されています。

 

中小企業全体にデジタル戦略が必要となることが浮き彫りになりました。出社が当たり前の時には顕在化しなかった、請求書や領収書が紙であること、印鑑や署名が必要であることの弊害を明確にしました。ロックダウン中に封書を受け取りに会社に行かなければならないようでは困ります。電子化されていれば、大企業だろうが中小企業だろうが、郵便受けのある場所(=会社)に人がいなくても請求書を受け取ることができます。

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Web会議が代表的な例ですが、営業の接点も対面からネット越しに移行、もしくは併用に向かいました。移動時間も旅費も節約できて、移動による疲労やリスク(交通事故など)を抑えられるので、アフター・コロナでも十分活用しようという企業は多いはずです。

 

消費者や取引先との接点(タッチポイント)としてのネットの役割は強まる一方です。DX戦略と大上段に構えてはいなくても、デジタル化、IT化の必要性を強く認識した中堅中小企業のトップは世界中で急激に増えました。

デジタルを活用することが社員の生産性を向上させたり、パンデミックなどの状況下では事業継続の上で、社員の安心・安全につながることから満足度や忠誠心の向上にもつながることが分かってきています。

 

リモートワークが増えたことで、共働き世帯では部屋の数の多い郊外の住宅に引っ越す例も多いというアメリカなどでは、アフター・コロナだからといって急に元のように出勤が前提の業務に戻すことは困難でしょう。VPN(仮想専用網)、BYOD(個人所有機器の業務利用)など、リモートワーク以前には導入の動機付けが強くなかったことについても有用性が理解され始めているようです。

 

ビジネスチャットや、ワークフロー、グループウェアなどは、組織の階層が少ない中小企業の方が導入が実は容易で、こうしたツールが現場と経営トップとの距離を大きく縮めるため、導入の効果も高いと言われているようです。有用性、有効性に気付いて自分でも使い始めた中小企業の幹部は、複雑な組織のトップにいる大企業の幹部よりもデジタルの恩恵を実は大きく受けるのかも知れません。

 

<参考情報>

The Digital Transformation of SMEs

6 Keys to Digital Transformation Strategyfor Small Businesses

The Overlooked Middle In Digital Transformation: Small To Medium Business

What Is Digital Transformation for Small Business?