テクノロジー会社はプロフェッショナルサービスに注力

エンジニアの守備範囲は多岐に渡ります。インフラエンジニアは、サーバーのハードウェアに適切なOSとミドルウェア、アプリケーションをインストールして、ネットワークに接続して、セキュリティにも配慮。運用中はログを監視してトラフィックが増えれば設備を増強。セキュリティパッチを当て、計画停電に備えます。クラウドもAWSに精通しているだけでは不十分で、マイクロソフトやグーグルにも対応する必要があり、アプリケーションを素早く配備するためにコンテナ仮想化にも対応します。アプリケーション、データベースにもそれぞれ幅広い領域と、奥深い技術領域が広がっていて、しかも、日進月歩でどんどん変わっていきます。
技術に精通しているだけでは不十分で、エンドユーザのトレンド、それが一般の消費者だったり、法人ユーザーだったり、日本限定だったりグローバル市場だったりしますし、スマートフォンの普及、音声コマンドの一般化、AI活用など、大きな流れ、小さな激流にもキャッチアップしなければなりません。開発プロジェクトや改修プロジェクトを率いるとなるとプロジェクト管理の手腕、ステークホルダーとの交渉、予算管理、トラブルシューティング、スクラムマスター的な動きなど、コミュニケーションやマネジメントのスキルもある程度以上は必要になります。

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そんなオールラウンド・プレイヤーは、もしいたとしても極めて珍しい存在です。エンジニアは得意領域があり、コミュニケーションにも得手不得手があるのが一般的。ということは、企業や組織がデジタル分野のあらゆる領域をカバーするためには、専門分野の異なる大勢のエンジニアやマネージャーをそろえる必要があるということになってしまいます。そんなことはまったく現実的ではありません。

例えば、ネットワーク設計の専門スキルは、構築してから見直しが必要になる時期まではフル稼働させる必要がありません。一方、Webのアクセス解析やSEOのスキルは毎日毎日必要です。

そのため、ユーザー企業は他社のプロフェッショナルサービスを活用して、自社に足りない情報や技術を補い、構想から実現までの期間を短縮しようとしています。企業の経営課題を理解し、戦略の具体化に最適な実現方法を提案し、投資対効果を高めて競争力をアップさせるには、常に最先端の技術を追いかけ、かつ、世界的な視野で多くの成功事例や失敗事例に熟知している専門家の助力が有効です。また、設計や構築にも専門家の知見が役立ちます。

こうした専門家のサービスはテクノロジーに強いコンサルティング会社も提供していますし、ベンダーも自社サービスの周辺領域に関してさまざまなプロフェッショナルサービスを提供することで、顧客のエンゲージメントを高めようとしています。

ベンダーが提供するプロフェッショナルサービスの場合、顧客の投資対効果を最大化するという観点で見た場合、自社製品やサービスを選択することが最適とは限らないというジレンマもありますが、逆に、過度に自社製品・サービスに固執しないプロフェッショナル・チームは、顧客企業との長期的関係樹立にフォーカスしている可能性が高いので、信頼を勝ち得ることでビジネスを維持・成長させようとしているのかも知れません。顧客企業側としては、ベンダーロックインに注意しながら、技術の目利きよりも、パートナーの目利きに力を注ぐ方がよいのかも。



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