ミャンマーのDX
今年に入ってからミャンマーの情勢は非常に厳しく、全く予断を許さない状況が続いています。本稿は、少し前のミャンマーの状況についてです。
アルファベットや半角数字は1バイト(=8ビット)つまり256通りのコードがあれば十分に表現できますが、日本語には平仮名、片仮名、漢字がたくさんあるので2バイト必要です。中国語や韓国語も同様です。
日本国内だけで使うシステムであれば、日本独自の文字コードでよいのですが、国際的な通信を伴う場合などでは世界で通用するコード体系に従う必要があります。もっとも一般的なものはUnicode(ユニコード)で、1990年代から世界各国のコンピュータのプログラミングがUnicodeに対応し始めました。
ミャンマー語(ビルマ語)は文字の数はそれほど多くないものの、Zawgyiという独自の文字コードがずっと使われていました。世界各国のシステムがどんどんUnicode化していく中、ミャンマーの対応は世界で最も遅いと言われていましたが、2019年になってようやくUnicode化が進展しました。つまり、ミャンマー政府がデジタル化、グローバル化に本腰を入れたのが2010年代後半になってということなのでしょう。遅れているという危機感もあってか、ミャンマーのICTは2016年の設立された運輸通信省(MoTC)の「ユニバーサルサービス戦略2018-2022」という5か年計画に基づいて進められています。
まずは通信サービスを人口の9割以上に、インターネットアクセスは85%以上に、高速インターネットは50%以上に拡大する目標が立てられ、2020年の段階で最初の2つについてはほぼ達成されている模様です。
インターネットアクセスの伸びは主に3Gと4Gのモバイルのカバレッジが拡大していることに起因しています。かつては国営のMPT(Myanmar Posts and Telecommunications)が国内唯一のキャリア(固定も携帯も)でしたが、ノルウェーのTelenorとカタールのOoredooにもライセンスが付与され、2014年にサービスを開始しています。また2018年にはベトナム国防部のViettelと地元企業のコンソーシアムが共同で運営するMytelと、ミャンマー軍部の支援するStar High Public Companyもサービスを開始しました。
なお、MPTは固定回線の主たる事業者であって都市部のブロードバンド固定網を運営しています。ただし、固定ブロードバンドの普及率は非常に低く、2018年には0.1%程度だと推定されています。当然のことながら、固定通信網の整備が進んでいない場合には、鉄塔やビル屋上などを利用して基地局を設置し、モバイルのアクセス環境を整える方がずっと安価で、しかもスピーディーです。したがって、今後もブロードバンドはワイヤレスで整備されていくものと予想されます。しかし、その場合でも光ファイバー網が全国をカバーする必要があることには変わりありません。
なお、Huaweiは2018年にミャンマーで100万台以上のスマートフォンデバイスを販売したようです。短期間に複数のモバイル事業者が参入したことから、通信料金は劇的に下がり、1GBのデータを1ドル未満で提供する料金プランが一般的になっています。競争はさらにサービスの品質や性能の向上も促していて、モバイルのデータのダウンロード時間がどんどん短縮されているようです。
ミャンマーは、ICT、電子政府、ネットワーク、サイバーセキュリティといったデジタル対応の4つの指標においてASEAN中で最低ランクに位置付けられ、2019年2月にはミャンマー・デジタル経済ロードマップ2018-25を公開してこの事態の是正に向けた政府の取り組みを明らかにしました。これによると2025年までに金融取引におけるオンラインの割合を2019年の0.5%から30%にまで引き上げ、同国のデジタル業界に対する外国からの直接投資を60憶ドルから120憶ドルへ倍増するなど14の目標が掲げられました。
通信インフラの急速な整備による弊害としては、外国からのサイバー攻撃に対して脆弱になったことが挙げられます。電子商取引が増えれば標的になる可能性も高まります。
こうした状況を踏まえてデジタル戦略が進められている中で、2021年になって状況が一変してしまいました。インターネットの遮断という事態も頻発しました。さまざまな立場の人がいることはどこでも同じですが、平和で安心して暮らせる日々が戻ることは多くの人々の願いであることは間違いないでしょう。
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