美術館のデジタル

世界各国の美術館や画廊などは、新型コロナ感染症によって来場者が激減するよりもずっと前から、来場者の減少という問題に直面していたそうです。特に若い世代を惹きつけることが大きな課題でしたので、デジタル技術を活用したさまざまな試みがなされてきました。そうした流れを大きく加速したのがCOVID-19であることは疑いの余地はありません。

美術館

ニューヨークのメトロポリタン美術館の「Unframed」(閉鎖中)は、携帯大手Verizonの協力の下、4Gと5Gのスマートフォン利用者が、自宅などから芸術作品に触れることができる仮想ツアーを提供していました。Unframed(フレームを外す)の名前通り、さまざまなゲームをクリアすると芸術作品を自分のスペースにARで表示するため、好きな作品のロックを解除する(作品の枠を外す)ことができます。

2011年からGoogleはアートプロジェクトを通じて提携した美術館の作品を高画質で鑑賞できるサービスを提供していますが、2017年からは世界 80 か国、2,000 以上の美術館や博物館の作品、ストーリーをiOSやAndroid端末からさまざまな形で楽しめるGoogle Arts & Cultureの提供も始めています。

各美術館の作品を高解像度で鑑賞したりするだけでなく、自分の顔に似た人物が描かれた作品を探すといった機能も提供されています。

北京の紫禁城博物館は、ライブストリーミングを使ったガイドツアーを提供しています。

紫禁城

ライブストリーミングは、ECなどでも中国では絶大な人気を誇る情報提供方法ですが、中国で人気の高いライブストリーミングは比較的長時間に渡って映像と音声を流し続けます。また、チャットなどを使えばガイドが一方的に説明を伝えるだけでなく、参加者からの質問に答えることも可能です。VRやARよりもさらに深い情報に触れるにはガイドツアーに参加するという方法もありそうです。

ネットを使えば学芸員さんから専門的な話を聞くこともできますし、芸術家や評論家と直接つながって学ぶこともできます。美術館や博物館では、ガイドツアーやレクチャーによって来場した人々に学びの場を提供していることろが少なくありませんが、パンデミックの状況下で自宅で過ごす時間が増えてしまった人々にとっては魅力があり、参加者の満足度も高いそうです。

例えばイタリア語が分からなければイタリアの美術館のガイドツアーに参加しても内容を理解することができませんが、自動翻訳などを使えばネットを介することによって、言葉の壁の問題も軽減されます。