ヘルスケアDX

医療の領域での消費者(=患者)の行動は、商業領域での行動を反映し始めています。つまり、病院を選び、治療法に納得する上で、ネットへの依存度をますます深めているのです。

 

medical info

 

インターネットには無数の医療関係情報が溢れています。

中には見るからに怪しげな民間療法もあれば、効果のほどが疑わしい健康食品や健康法の情報も多く、注意が必要なようです。しかし、専門の医療機関から発信される情報は、必ずしも患者の立場から書かれていないため、治療にともなう苦痛とか不安についての情報は、一般の経験者の投稿を参考にする人も多いでしょう。

しかし、これもネットにあふれるステマ(消費者の意見を装った広告)である場合もあります。

 

人々は、病気やその症状、治療法などについて、ネットから情報を集めるようになりました。これはちょうど、いろいろな商品やサービスを購入するかどうか検討しているときと同じような行動です。

つまり、検索してヒットした情報をいくつか読み、症状や可能性のある要因を調べ、薬やその副作用、外科的な手術を伴う場合のリスクや必要な入院期間などについても情報を得ようとします。Q&AサイトやSNSを使って質問を発することもめずらしくありません。

 

今では医療情報が膨大すぎて、AIの方が医師よりも正しく判断できるという話までありますが、どこの国でも、かつてはお医者様から言われたことを忠実に守ることが患者の務めのように受け取られていました。

そのため、例えば、医師が処方した薬をきちんと決められたとおりに服用することを、コンプライアンスと呼んでいたそうです。今では企業などの「法令順守」といった意味合いでよく使われるコンプライアンスですが、医師の指示を順守するということでそのように呼ばれていたのでしょう。

 

また、美容の関係や外科治療など、高額あるいは高リスクなものに関しては、患者は最終的な決断をするまでに過去の患者さんたちの経験や、さまざまな事例を調べるために、さらにおおくの時間と労力を費やします。ここでもデジタルのコンテンツが大きな役割を担っています。

 

患者さんが求めているのは、透明性であり、医療機関の説明責任ですが、それに加えて利便性も求められます。じっくり情報を探して隅々まで読み込めば、どこかに小さく説明されているのではダメでしょう。

 

tablet

 

医療機関側がまず考えることは、モバイル対応とSEO対策でしょう。患者の多くが検索エンジンを出発点にします。SEO(検索エンジン最適化)では全国や全世界の患者さんを相手にする必要はありません。地元のSEOを主体に考える必要があります。患者さんが最初に探しているのは、自宅や職場の近所の医療機関の情報であり、最寄りの大都市の医療機関の情報です。音声で検索されることも念頭に置く必要があります。

 

ソーシャルメディアについては、双方向性を活かして医療相談や問診、診断などの場に使うことはできませんけれども、ウェブサイトへの流入を増やす上で非常に重要です。人々が異なるソーシャルメディアは異なる行動をとっていることを意識してSNS戦略を練る必要があります。

同時に、自らが発信する情報を届けることだけでなく、ソーシャルメディア上で、自分たちに対する評価や評判がどうなっているのかをウォッチしておく必要があります。ただし、否定的なコメントやレビューを避けたり削除することは得策ではありません。多くの場合、否定的な意見には自分たちが改善すべきポイントが指摘されているのですから、コメントやレビューに即応するのではなく、きちんと時間と労力を費やして、批判された点を修正することで悪いコメントを減らしていくことが大切になります。これは医療機関に限ったことではなさそうです。

患者は、ほとんどの場合、治療やリハビリを苦痛と感じるのが当然で、そうした意見がネットに現れることは避けられません。

 

コンテンツそのものがすべての基礎になります。コンテンツが視聴されるのはPCではなく、タブレットやスマートフォンが主流になっているため、多くの文字や精細な画像で表現するよりも、ブログ、ビデオ、ウェビナーなど、情報の消費を助けるコンテンツ制作が求められます。

 

そして、新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりは、遠隔医療の扉を各地で開いたようです。

患者さんを医療機関に呼び込むデジタル・マーケティングだけでなく、医療機関のデジタル・トランスフォーメーションは、外来や健診の予約、問診票の電子化、Web会議を活用した問診、検査結果の電子データ提示、処方箋の電子化などなど、継続的な関係性、医療機関と患者の「接点」の変容へと波及していきそうです。

 

ネットにあふれる危ない「アドバイス」にはくれぐれもご注意くださいね。

 

 

 

<参考情報>