法律事務所のDX

COVID-19は世界各国の法律事務所の活動にも当然のことながら影響を与えています。弁護士とクライアントの面談は、会議室での対面からWeb会議へ移行し、請求書や契約書の電子化も加速したようです。また、Web会議以外のコラボレーションツールや、ドキュメント管理など、すでに導入されていたものの利用がさらに進んだようです。しかし、これらは特に新たな潮流ということでもないし、法律業界に限った話でもありません。

マーケティングに利用されるテクノロジーをマーテック(marteck)利用されるテクノロジーをフィンテック(fintech)と呼ばれますが、法律サービスに利用されるテクノロジーは、ローテック(lawtech)と呼ばれます。なんだか、ハイテクの反対のローテクみたいで音の響きは今一つかも知れませんが、法律サービスに適用される技術は実際にはハイテクです。

 

例えば、弁護士の大事な仕事はクライアントの相談に対する法的なアドバイスですが、このアドバイスをするには、法律の条文、国や自治体の政令や指導、過去の裁判の判例などなど、膨大な予備知識が必要です。実際、弁護士や裁判官、検察官になるための司法試験は日本では最難関の国家試験ですが、この試験に合格したのちも、法曹界の人々は常に新たな知識を獲得し続けなければなりません。

また、大学の法学部はいわゆる文科系ですが、法律家には理科系の知識も必要です。事件そのものに物理学や化学、生物学や医学、地学の知識が必要な場合もありますし、サイバー犯罪を扱うためにはネットワークやセキュリティの技術にも精通する必要があります。不正経理を暴くためには会計の知識だって必要になります。

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上記の中でも特に過去の類似の事案について知識として持っていたり、素早く探して調べる能力は法律家にとって大変重要なのだそうです。この領域、人工知能(AI)が大きな助けになると期待されています。財務諸表の分析にもAIは役立ちます。

 

人工知能が過去の判例などを調べるようになると、弁護士はその調査結果を踏まえて、交渉を行うかとか、法廷でどのように戦うかといった部分に頭と時間を使うことができるようになります。

 

また、例えば意匠などデザインの権利侵害についても、AIであればネットを監視することもできますし、似ているデザインを探すといった仕事もこなせます。

 

ローテックへの投資は急増しています。イギリスでは、ローテックに取り組むスタートアップ企業への投資額が2016年には250万ポンドだったものが、2019年の3つの四半期(9か月分)で6200万ポンドに跳ね上がったそうです。

 

AIであれば、繰り返しの作業にも対応してくれます。東京の弁護士が調べたことを、大阪の弁護士がまた調べるとなれば時間は倍になりますが、法的なアドバイスの内容をデータベース化して、AIが検索するようになれば、全体で繰り返し作業が劇的に少なくなって、法律サービスの質が向上します。

 

法律事務所の業務が効率化すれば、ローテックへの投資に資金を回すことができるようになりますから、法律事務所のDXはグッド・サイクル、つまり、成功が成功の元を生むように、どんどん拡大していくと思われます。

ただ、医師や弁護士には厳しい機密保持の義務がありますが、テクノロジーを活用する場合も、厳しいレギュレーションとガバナンスが求められます。

 

ローテックは、欧米が先行しているようですが、グローバル化が進む今、日本の法律事務所も遅れをとるわけにはいかないはずです。Web会議の画面の向こうにいるのは生身の弁護士さんでなくて、AIのアバターが話しているようになるのかも。

 

<参考情報>