ハイテク倉庫

物流倉庫のデジタル化というとベルトコンベアで運ばれてきた荷物が自動的に仕分けされたり、自動運転のフォークリフトや台車が無人のまま縦横無尽に、衝突もしないで走り回っていたりといった映像が目に浮かぶかも知れません。

高い棚

さまざまなロジスティクスや倉庫業務のデジタル化は、そうした派手で目につきやすい部分だけでなく、ワイヤレスやAI(人工知能)の力によって根底から変革が進んでいるようです。それは収益性に直接関係していて、さらに競争優位を維持する上でも避けて通れないことだと思います。つまり、回転率が低く効率の悪い倉庫からは多くの収益を上げることができませんし、競合他社が迅速かつ正確に倉庫内のものを指定の場所に届けることができる場合、顧客は簡単にそちらへ移ってしまう可能性があるからです。

 

物の移動が従来通りのパレットと人が運転するフォークリフトであったとしても、ラックにはQRコードやワイヤレスの小さなデバイスがついていて、倉庫内にはさまざまなセンサーも設置されて、室内の照度、温度、湿度、音、振動、空気の汚れなどのデータを送り出しているかも知れません。

通信は、スマートフォンのWi-Fiのようにアクセスポイント(親機)とデバイス(子機)のような関係ばかりではなく、それぞれのデバイスがノード(結び目)になって網目状のメッシュになっている場合もあります。

そうしたスマートなセンサーやデバイスは、モノ(=資産)の保管場所のリアルタイムな追跡を可能にしてくれます。温度などのパラメータが一定の値を超えたり、下回ったり、何かが連続したり、AIカメラがいつもと違う挙動をする物をとらえたら、即座に管理者に通知することができます。

例えば、帳簿を開いたり、現地に赴いて確認しなくても、食料品その他の貯蔵物が古くなっていないか容易に確認したり、古くなる前に警告を発することも可能です。つまり、人の手による介入を大幅に減らすことができます。

 

実際に倉庫内で作業する人々にも技術の恩恵があります。スマートフォンやタブレット、スマートグラスやVRゴーグルを、音声コマンドで操作することができるので両手が使えます。作業者の動きが楽になり、疑問点があれば無線で指示を仰いだりしながら、ピッキング、梱包、キッティングの操作を行うことができます。

GPSの電波は上空の衛星から送られてくるため、地下や建物の中には届きませんが、Wi-Fiのアクセスポイントやビーコンなどを使って、屋内でも正確な位置情報を活用することができるようになっています。むしろ、GPSよりも正確に高さなどの情報を利用することもできるようです。ラックから物の載ったパレットを引き抜いたりする際には、こうした情報にRFIDなどのタグを組み合わせて、正確かつ迅速な作業が可能となりました。

倉庫

情報が行き交うようになると、人が動く距離が短くなる効果があります。COVID-19以来、世界的にWeb会議が盛んに使われるようになったこともあって、以前なら電話で指示するよりミーティングで周知した方がいいということで招集されていた人々が、それぞれのいる場所からスマートフォンなどで会議に参加することが可能になっています。

 

管理者は現場に出向かずとも、あるいは外出先からでも倉庫内の状況をデータや映像で知ることができます。

映像、例えば、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)は、作業者のトレーニングにも活用されています。作業内容を説明した文書を渡されて自分で読んで理解しようとする場合、仮にその文書が上手に作られていて、写真などが多用されていたとしても、5分や10分では十分に身に着けることは難しいでしょう。けれどもARやVRであれば、疑似的な体験として記憶に残るはずです。

 

機械学習がこれまでの履歴のデータを学んで、将来の需要などを予測してくれるようになるので、収納場所の最適化計画が立てやすくなります。受発注の電子化はブロックチェーンの応用などで進化を続け、迅速さが増して、エラーは減ります。

 

倉庫のデジタル化は乗り遅れることの許されない大きな流れだと考えられています。

 

 

<参考情報>