インドのDX

インドのデジタルトランスフォーメーション市場は2019年には425億6000万米ドルに達しています。日本のDX市場は2020年で1兆2189億円の見通しで113億3680万米ドルです。人口が違いますからインドは1年前に日本の4倍規模に達していたことになります。

インドは桁違いで2026年までには4倍の1764億米ドルに達し、2020年から2026年のCAGRは72.3%と予想されているそうです。すでに、市場の規模でも、アプリケーションの豊富さや、国民への浸透度合いから言っても、インドはデジタル先進国で、日本は完全に後塵を拝しています。


例えば、固有識別番号庁(UIDAI)が推進するAadhaarプログラムは、国民一人ひとりに固有のIDを発行するシステムで、2016年の時点ですでに登録者数は10億人を超えています。今では12億人の国民の身元をデジタルで認証することが可能な、指紋・顔・虹彩を活用する世界最大の大規模生体認証システムです。モバイルの加入者数は日本の人口の約10倍に当たる約12億。インターネット加入者は5億6000万に達しています。

日本でもIT業界で働いていれば、インドの先進性はなかば常識のようになっていますが、他の業界におられる皆さんは、インドの凄さをまだご存じないかも知れません。すでにインドを飛び出してアメリカのシリコンバレーで活躍しているインド出身のエンジニアは数知れず、2015年には、Google、Microsoft、SoftBank、Master Card、NOKIA、Adobeなどの超大企業のCEO級にインド出身者が名を連ねたことが大きな話題になりました。

日本にもすでにインドから優秀なエンジニアが多数来ていて、日々、先進的な技術開発業務に携わっていてくれています。きっとWhatsAppなどを使って、時差3時間半の母国インドの友人や家族たちとビデオチャットをしたり、e-Kranti(行政サービスの電子配信)を活用して必要なサービスを利用したり、故郷の映像を見たりしながら、日本で頑張って仕事をしているのだと思います。

インドも2カ月ほど前に新型コロナウイルス感染症への対応で厳しいロックダウンに入ったため、インドのメーカーはオンラインでの販売に注力しました。電子商取引は、消費者の側にも歓迎され、流通チャネルとして確固たる地位を獲得したそうです。電子商取引の急増は物流にも影響を与えます。メーカーから全国に点在する小売店に商品を流して、各店舗に陳列して消費者に見せ、売れたら各店舗の在庫から補充するというこれまで当然だった物の流れは非効率になって、全国をカバーする拠点を国内に1つか2つ作って、注文があるたびにそこから全国に向けて発送する方が柔軟で迅速な対応が可能になり経済的です。

COVID-19はインドでも他のアジア諸国でもビデオ会議が多用され、オンラインバンクの利用が増えたようです。スマートフォンの利用が増え、アプリ経由のアクセスが急増すればITインフラの強化や、セキュリティの強化が必要になります。

マーケティングに活用できるデータがどんどん作られるので、これを活用できる企業とできない企業の差が広がるはずです。カスタマーエクスペリエンスのよいものが残り、ダメなものは淘汰されるというのも、インドに限ったことではありませんが、COVID-19を機に加速するのではないでしょうか。

記事によれば、DXに失敗する主な理由は技術ではなくて文化だそうです。ビジネスの進め方(プロセス)そのものがアナログではダメですし、ペーパーレス化を目指してさまざまなツールを導入しても経営幹部が会議資料をプリントアウトすることを求めたり、電子決済や電子契約、企業間の電子取引に消極的ではDXは進みません。

 

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