フィットネス産業とデジタル

密を避ける必要性から、世界的にフィットネス産業は打撃を受けたようです。感染症の恐れがある都市などで、運動をするために大勢が同じ施設の中に集まるわけにはいきません。営業の中断を余儀なくされたジムが多数あり、運営が可能となっても人数を絞るなど、厳しい状況が続いていたようです。

無人のジム

しかし一方、自宅にいる時間が長くなった人々にとって、運動不足は深刻な問題です。そのため世界各国では逆にジムの運営するウェブサイトへの人気が高まっていて、映像を活用した新しいフィットネス・ビジネスが成長したようです。

コロナ禍では誰もが自信の健康に気を配り、野菜を中心とした料理やカロリーを抑えた食事などにも関心が集まっています。

人気が高まれば新規参入事業者が殺到しますから、既存の事業者も含めて競争が激化します。自宅で過ごす時間が多いとなるとジムと顧客のタッチポイントにおいてウェブの比重が高まります。これまで以上にカスタマー・エクスペリエンスの優劣が、競合に抜きんで要るためには重要になっているはずです。

ウェブを使って無料の体験や、家族や友達の紹介に伴う割引などの告知を行って適切なSEO対策を実施するのは当たり前として、インフルエンサー・マーケティングの重要度が高いそうです。どんな商品やサービスでもそうですが、提供する企業側がどんなに自画自賛しても疑いの目で見られてしまい、信頼できる第三者が褒めたりけなしたりすると、そちらの意見やレビューには信頼が寄せられます。

フィットネス業界で多用されるのはInstagramとYouTubeだそうです。ビジュアルがものをいうということなのでしょう。

ソーシャルメディアを活用した広告では、場所や興味・関心、仕事の状態などの似通ったセグメントのオーディエンスをターゲットにすることができます。

広く知らせる情報には、例えばパーソナルトレーナーの経歴やルックス、既存のメンバーからのレビュー、クラスの様子を撮影した動画、スケジュールや料金などいろいろあって、さらに、オンラインであれば予約を取ることもできます。

スポーツ

ジムは、単にフィットネス用の機器や、ヨガ・スタジオなどの設備を用意して、人々にそれらの設備を利用してもらうだけという単純なビジネスから脱却しつつあるようです。家庭で使えるフィットネス機器の使い方を示した上で販売するとか、栄養・サプリメントのEコマースを併設するとか、さまざまな展開が可能です。

特に健康に関する産業は、継続して使われる場合が多いので、顧客の獲得と維持が極めて大事になってきます。もし、購入したプロテインや栄養補助ドリンクが有効だと顧客が感じたら、二度目はもっと大量に購入するかも知れないし、効果が持続すると理解されたらリピート購入も期待できます。

スマートウォッチやウエラブルデバイス、スマートフォンのアプリなどは、利用者の健康関連の情報をデジタルで計測し、蓄積したり送信したりする機能を持っています。歩数や消費カロリー量、泳いだり自転車で移動したりした距離、スピード、体重、体脂肪率、体温、血中酸素濃度、血圧といった数値が手軽に計測できて、しかもデジタルデータとして活用できるようになっています。

少し前まで歩数は歩数計、体温や体温計、体重は体重計、血圧は血圧計で測って、もし、記録に残したければ、紙に書き写したり、Excelか何かに手で入力しなければならなかった時代が長く続いていたのに、今ではBluetoothなどで簡単にデータが飛ばせて、クラウド上に保存したり、グラフにしたりすることも容易です。心電図や血糖値も手軽に取れるようになるでしょう。

こうした数値を病院やクリニックに行かなくても計測できて、しかも、何週間かに一度ではなくて毎日、場合によっては一日に何回も計測できるようになったので、医療に対しても有益な情報が集まるでしょう。

また、毎日のようにデータが残せるということは、フィットネス・ジムが利用者との絆を強化することにも活用できるでしょう。

<参考情報>