ERP刷新とデジタルトランスフォーメーション

経理や人事・給与、製造、在庫管理、物流管理その他、企業(エンタープライズ)の活動の根幹の業務を動かす人やモノといった経営資源(リソース)を効率的に有効活用するための基本的な計画(プランニング)をERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)と言います。また、そのためのソフトウェアやクラウド型サービスをERPシステムとかERPサービスと呼んだりします。

 

従来からある基幹系システムと混同されることも多いようですが、あまり用語の定義に囚われることなく、企業の主要な活動をICT(情報通信技術)で支えるものの総称のように使われているようです。

 

そして、DX(デジタルトランスフォーメーション)について語られるときには、その戦略の主要な部分に必ずと言っていいほど、ERPの新規導入とか既存ERPの刷新が入っているようです。今のやり方や、今のシステムは古くて時代に合わないから、これを最新のものにして、業務そのものをデジタルの力で進化させようというわけです。

 

オフィス

 

確かにモバイルやクラウド、AI(人工知能)やIoTにまで対応した最新のERPをさまざまな事業者が提供していて、その素晴らしさをアピールしていますが、つねに新しいものへの変更、乗り換えが正しい選択とは限らないようです。

 

そもそも、新しいプラットフォームへの移行には、さまざまなコストがかかります。まずは今あるシステム(手書きの伝票やFAX、CSVやExcelのファイルなどなど)がどうなっているのか整理をするのにも時間と手間がかかります。

また、既存のシステムは現場での使い勝手を高めるためにさまざまな創意工夫が追加されている場合もあります。Excelの名人が複雑なマクロを残していて、引継ぎがうまくいかずに中身がどうなっているか誰にもわからないとか、ベンダーのサービスを前任者がカスタマイズしていて、記録が残っていないとか。そうすると、新しいプラットフォームに対する要件を明文化することが難しくなりますし、新しいプラットフォームで謳われている機能や性能が、自社の要望に応えているかどうか判断することも難しくなります。

 

さらに、すでに何らかのERPパッケージを使用中であれば、それは長年に渡って改修が重ねられ、利用者の不満を解決したり、要望を取り込んだりしながら進化してきたものであるはずです。それに比べて新しいプラットフォームは未熟である可能性があります。オンプレミスでうまくいっていたものも、クラウドに載せ替えただけではうまくいかないもののようです。そうすると、いろいろな不具合に遭遇して、有料サービスの料金を支払い続けながら、デバッグに突き合わされているような羽目に陥ってしまうかも知れません。

 

WTOT

 

そんな中、既存のERPを活用しながら、より多くの価値を引き出そうという課題に取り組んでいるユーザー企業も現れているそうです。以前から使っているシステムであっても、データはデジタル化されていますので、外付けのRPAなどで業務効率化、自動化を進めたり、機械学習により見える化の一歩先を目指したりするのです。

ERPの刷新には相当なコストと手間がかかりますし、導入の効果をあらかじめ評価することは難しいので、もっと小回りの利く施策を複数組み合わせて、本質的な部分に手を入れるという考え方のようです。

 

デジタルの根幹は3本柱だそうです。1つ目は顧客体験。この場合の顧客は消費者とは限らず、法人の場合もありますが、顧客がいないところにはビジネスはありません。標準品や汎用品を売っているだけであっても、買い手である顧客の買い方や意思決定には特徴が必ずあるので、製品そのものではなく顧客との接点の作り方という意味でのカスタマイズやパーソナライズは、代替品があふれる今、企業にとってはまさに最重要な課題でしょう。

二番目は業務プロセス。デジタル化を進めてビジネスプロセスを標準化し、業務を合理化し続けることが競争優位を保つための基本です。

そして三番目はビジネスモデル。情報化が進むと、例えば自社はハードウェアの製造業だと規定していたはずのメーカーが実は顧客に提供しているのは広い意味でのサービスだということに気づく場合もあります。

 

ERPを新しいものに乗り換えるにせよ、既存のものを上手に使って大きな価値を引き出すようにERPの中身や周辺に手を加えるにせよ、意思決定に当たっては、上記の三本柱を念頭に検討していく必要がありそうです。

 

来年度の計画には、どのようなデジタル戦略が織り込まれていますでしょうか。

 

<参考情報>