デジタル切符
コロナ禍で公共交通機関は世界各地で大打撃を受けました。ロックダウンや外出の自粛、テレワークやオンライン会議が多用され、人々は移動することにはお金も時間もかけず、自宅での仕事環境の整備などにお金を使うようになりました。
ホワイトカラーがオフィスを構えて、社員が電車やバス、自転車や自家用車で通ってきて集まって仕事をするのが当たり前だったのは過去の話で、東京でも緊急事態宣言下では通勤を7割減らすことが求められるなど、なるべく移動しないことが社会的な責任を果たすことになりました。
コロナ禍の少し前から、人の移動はMaaSによって次のステージに上がると言われていました。スマホのアプリなどで目的地を入力すると、バスや電車などを乗り継ぐ最適の交通手段とルートが分かって、決済もスマホで可能。自家用車の利用も減って環境にも優しい世界につながるというもので、日本でも各地で取り組みが行われています。実際には、個々の交通機関が別々の取り組みをしていてはダメで、国のレベルでの連携が必要になるそうですし、どちらかというと旅行や出張など経路を検索して利用する形態が主体で、通勤・通学など日々の移動では必要不可欠ということではなさそうです。
交通系ICカードは広く普及してきていて、最近ではスマホのアプリにもなっているので、自動改札でスマートフォンやスマートウォッチなどをかざしている人も増えています。
日本の場合、4月や9月の春休み、夏休み明けに通学定期や通勤定期を求めて駅に長蛇の列ができることが風物詩のようになっていますが、密を避けるという点では好ましいことではありませんし、並ばされる方としても長時間、駅の切符売り場で待つのは大変です。
交通系ICカードの場合には、学生証の提示などの手間はあるものの、定期券はネットでの予約販売が始まっています。バスの定期券には、スマホのアプリを使っている例もあって、購入のときだけでなく乗車の際もデジタル化が進んできたと言えそうです。
切符や定期券(コミューター向けパス)のデジタル化は諸外国でも進んでいます。もちろん、利用客の利便性向上もありますが、オンライン決済でデジタル切符やデジタル定期券を使うようになって、乗車時や降車の際に、タップやタッチをするようになると、交通機関側にも大きなメリットがあります。
交通系ICカードであれば、乗車した駅や停留所、降車した駅や停留所が記録に残りますが、紙の切符ではこれを捉えるのがとても大変です。通勤通学の途中で乗降調査のアンケート用紙を受け取った経験がある人も多いのではないでしょうか。
切符がデジタルになれば、こうしたトラッキングが容易になりますし、切符の種類を増やすのも容易です。最近、時間帯によって運賃を一日の中でも変動させるという議論がありますけれど、紙の切符や定期券でやるとなると改札口などでの確認が非常に難しくなります。
スマホの切符や定期券であれば、こうしたことは柔軟に行うことができ、例えばオフピーク時の利用にポイントを付与するといったことも可能になります。運行情報や混雑状況を利用客に伝えるのにもスマホのアプリは役立ちます。
定期券購入のためにできる行列が消える日も遠くないかも知れません。
<参考情報>
- Is the ‘death of the commute’ forcing a ticketing rethink?
- New Alexa Transit Feature Provides Voice Public Transportation Guide
- LIRR unveils real-time seating availability, accessible trip planning
- Ann Arbor launches contactless mobile ticketing solution