デジタル・ヘルスケア

今後もヘルスケア業界は新しい技術を取り入れて進化するでしょう。とくにCOVID-19は世界各国で遠隔医療の利用を大きく推し進めたようです。

 

感染症の拡がりは、当然のことながら非感染性の疾病の治療にも大きく影響しました。ロックダウンで自宅に引き留められた人々は、さまざまな理由から病院やクリニックの外来を訪れることを自粛したようです。

いわゆる遠隔診断のような医師と患者が離れた場所にいて、Web会議などを使って問診をして診断するようなケースばかりではなく、バックエンドのEHR(電子健康記録)の導入が各国で加速された模様です。

covid-19

日本の場合、カルテや処方箋が電子化されても、カルテそのものは病院やクリニックに保存されているだけで、患者が自分のカルテを持って他の病院に行くには書面(紹介状)などを作成してもらう必要がありますが、国によっては患者の側にもっと自主的に病院を選んだりする自由度があるようです。

 

病院を探すという行為は、Googleなどの検索エンジンが主な手段になりました。そのため、医療機関は消費財などのECサイト並みに、顧客の体験(=デジタル体験(DX))を重視して、サイトのコンテンツとナビゲーションを再設計する必要が生まれています。

検索した後、医療機関のサイトに行って、自分が何をするか考えてみると、診療内容、アクセス、診療時間、外来に対応する医師、駐車場の有無、治療内容(医療機器の配備など)その他、さまざまなチェック項目があることが分かりますし、気になる場合にはその病院やクリニックの評判や、他の医療機関との比較も調べるのではないでしょうか。予約の有無をチェックして、可能であればオンライン予約するかも。

 

病院の情報は比較的静的、つまり、日々頻繁に変更されるものではないと考えられていたのは、パンデミックよりも前のことです。今では診療時間、対応する診療科目、ベッドの空きふさがり、インフルエンザなどのワクチンの有無その他、さまざまな情報が日々刻刻変化します。CMS(コンテンツ管理システム)を使っていないサイトではまったく対応できません。その場合はソーシャルメディアで適切に情報を発信する必要が出てきます。

 

医療機関の問い合わせには似たような質問が多く寄せられる反面、回答には注意が必要なので、AIチャットボットの利用が加速しています。AIは診断そのものにも変革をもたらすものと期待されているようです。つまり、一人の医師が症状や治療法を網羅的に知り尽くすことは不可能なので、AIに助けてもらうというわけです。

患者

医療機関の構造にも変化が生じてきます。一部の診療科ではドライブスルー型で患者との接点を最小限に減らす試みが各国で行われています。

握手やタッチパネル、ドアノブなどへのタッチは、忌み嫌われていると言ってもいい状態です。そこでは、電子的な申し込み、問診票、カルテ、決済といった手段を提供するインフラが必要になります。

 

変化は感染症が収まったとしても逆戻りのないもののようです。変化に対応できるかどうかで、医療機関そのものの未来も変わってくるのではないでしょうか。

 

 

<参考情報>